医療のたらい回しという表現 語源・意味・実態・体験談

救急患者の受け入れを拒否している救急病院と困っている救急車のイラストです。

いらすとや

このイラストはたらい回しの実態とはかけ離れているので、よくありません(と言いつつ画像を使わせていただいております)

医療のたらい回しに関して、

参考文献はWikipediaですが、非常にわかりやすく書いてあるのでお勧めです。

目次

たらい回しの語源と使われ方

明治、大正時代にかけて隆盛した曲芸の1つで、たらいを足などで回す曲芸。
転じて、物事を次から次へと送りまわすこと、面倒な案件や関わりたくない案件を、部署間で押し付け合う責任逃れや責任転嫁を呼ぶようになった。

参考:たらい回し|Wikipedia

この説明からはわかることは

ポジティブな意味の言葉ではない

ということですね。

医療における「たらい回し」

主に病院での救急搬送の受け入れ不能、受け入れ困難な状況が相次ぎ、あちこちの医療機関に問い合わせている状況をたらい回しと表現されている。マスメディアの報道媒体から派生した用語。

参考:たらい回し|Wikipedia

受け入れ先がなかなか決まらないことを「たらい回しにされる」と表現されることがあります。

たらい回しの使われ方から医療のたらい回しを解釈すると

病院・医者が面倒、関わりたくない救急患者の受け入れを拒否する

というネガティブな言葉になります。

はて、病院・医者は面倒だから救急搬送の受け入れを拒否しているのか?

という話です。

病院が受け入れを拒否する理由

大きく、人員的問題と設備的問題と技術的問題と収容キャパシティの問題があると思います。

  • 他の患者さんの緊急手術などの対応中で対応ができない(人員)
  • 重症患者を受け入れても機材がないため治療ができない(設備)
  • その病気に専門の医師が不在で対応ができない(人員・技術)
  • 入院のベッドが空いていないので入院させる対応ができない(収容キャパシティ)

という感じです。

これらは正当な理由だと思います。

これらの理由で受け入れが不可と言われても、不満に思いますでしょうか?

もし不満と言うのであれば

  • 他の患者さんの緊急手術などの対応中で対応ができない(人員)
    →手術中だろうと(自分優先に)みろ
  • 重症患者を受け入れても機材がないため治療ができない(設備)
    →なんとかしろ
  • その病気に専門の医師が不在で対応ができない(人員・技術)
    →専門外だろうが医者なんだから対応しろ
  • 入院のベッドが空いていないので入院させる対応ができない(収容キャパシティ)
    →なんとかして泊まらせろ

という考えでしょうか?(知りませんが)

「たらい回し」はネガティブワード

受け入れ拒否の真偽については、そのとき実際に問い合わせを受けた医師の判断・病院の状況によるのでわかりませんが、少なくとも受け入れ態勢が設備的にも人員的にも整っていて救急搬送の受け入れを行っている病院であれば、普通は受け入れているはずです。

たらい回し」と言う言葉は、一生懸命に働いている立場からすると、非常に辛い言葉です。

「面倒な案件・関わりたくない案件だから受け入れを拒否している」という意味が強く、どういう状況で断られたかが考慮されていないのに、あくまで全て病院側・医療者側が悪いと言っているようであり、突き刺さってきます。

「たらい回し」という表現はネガティブなワードですから

「たらい回しにされたことがある」と言われると、過去に救急搬送の受け入れに時間がかかった経験があったにせよ、理由もわからないのに(理由は知りようもないのですが)

医療者・病院を責めている発言という意味合いは少なからずあり、受け取り手もそのような認識が少なからず出ると思われます。聞いて気持ちの良い思いをする人はまずいないと思います。

なので

本当に医療者・病院を責めている、許していない、憎んでいる、という場合は仕方ないですが、そうでなければあまり使わない方がよい言葉だと思います。

特に新たに関わることになった医療従事者を前に言う必要はないと思います。お互いのために。

気持ちはわかるが言ったら損

勿論、患者さんからすればどういう経緯で受け入れを拒否されたかなんて知りようもありませんし、受け入れを拒否されたという結果だけが残りますから、不満を抱えてしまうのはわかります。

患者さんからしたら「さっさと治療してもらって治ればどうでもよい」のです。

その通りだと思います。

こちらも、さっさと治療して治って元気に帰ってもらいたいです。

ですが、こういった事情があることがある、ということをわかってもらえれば幸いです。

でも、そもそも受け入れ態勢が整っていない病院へ行きたいですか?

たとえば救急搬送で緊急手術が必要となる可能性が高い状態で、手術機材や設備が整っていない病院、すぐに対応できる医師がいない病院へ、行きたいですか?そんな病院に行って状態が良くなると思いますか?

設備が整っていなければ充分な治療ができませんし、すぐに対応できない状態であれば、結局待つはめになりますし、違う病院へ行った方が早いかもしれません。

無理して受け入れた病院へ行くことで、病状を悪化させる可能性もあります。

なので受け入れの判断は、病院側もしっかりとやらなくてはいけないのです。


また、たらい回しにあった経験があると言われても、「それはお辛かった経験をされたんですね」とは思いますが、それで対応や治療方針を変えることは、普通ありません。

過去のそのような経験を言われたところで、今の医者とは関係がない過去の事柄で、どのような真実があったのかもわからないことを、「たらい回し」と言う表現で医療者・病院側を責める発言は、その人にとってプラスになる要素はないと思います。

ただし先ほども申した通り、「こんな正当な理由があって」ということは患者さんは知る由もないし、結果だけが残りますし、一方正当な理由が本当にあったかどうかは医師の判断・病院の状況にゆだねられているのです。

勿論、本当に面倒だったから拒否した、ということがないとは言い切れません。

なので、結果としては、その受け入れられなかった結果だけが残るので、しかたない部分もあるかなとは思います。

実際にたらい回されているのかいないのか

これはどうでもいいことなのですが、

救急搬送の受け入れ先を探している段階では患者さんのからだは「たらい回されて」いません。

救急車はあちこちに移動しながら受け入れ先の病院を決めるのではなく、受け入れ先を決めてからその病院に救急搬送するからです。

受け入れ先を探している間、断られたりしている間は、からだはその場にとどまっている、ということです。

受け入れ先に到着してから、うちの病院ではやはり対応できないと言われ再度搬送されたら、からだ自体も移動するので「たらい回された」感がでるでしょう。

驚きのたらい回し

基本的には医療における「たらい回し」は救急搬送受け入れのときに使われるものと思っていました。(一般的にはそうです)

しかし以前、別の「たらい回し」発言を受けたことがあります。

他の科へコンサルトをしたとき、他の病院へ紹介をしたときです。

例を挙げると

  • 子どもが発熱しました、何科に行きますか?
  • 目が充血してかゆいです、何科に行きますか?
  • 耳が聞こえにくいです、何科に行きますか?

おそらくこれらの答えはわかると思います。(上から、小児科、眼科、耳鼻科です)

このように、医療機関でもその専門は分かれており、得意とする分野はそれぞれ違っています。(「この病気は何科」というように細かな専門を非医療従事者の方が分かる必要はないですが)

一般企業などでもそうでしょう。

電話問い合わせで、担当する分野が違ったら「担当部署につなぎます」となると思います。(企業の規模にもよりますが)

自分の領域を出てしまったら、その専門領域の人に相談して対応してもらうというのが普通です。

これを「たらい回し」と言われてしまったということです。(感情的に)

その場は収まりましたが、それ、言われたところでどうしようもないんですよね。ただ単にマイナスな言葉を投げかけられている感じです。

もちろん自身の診療技術、知識を向上させることは医師としては大事なことです。経験、知識によってより多くの病気をみることができ、より患者さんに適切な治療を提供することができるからです。

かと言って、すべての領域を深く把握し手術も含めた全ての治療をできる医師なんて、まずいないです。

現在の医療は専門分化しており、「広く浅く」ではなく「狭く深く」であり、それぞれの「〇〇科」という形に、さらに言えば同じ科でも病院毎に得意分野が変わってきます。病気の専門病院があるくらいです。

むしろ、自分のレベルを超えている内容なのに、知らないことを治療しようとするのはお互いハイリスクであり、お互いにお勧めしません。

なので、そういうときは違う病院を紹介します。


これはたらい回しとは違うと思いますが

でもやっぱり、そのような発言が聞かれるということは

医療側と患者側の認識のずれや違いは、なくなることはないんだなとも思いました。(相手に依るかもしれません)

まとめ

「たらい回し」「たらい回された」などは、ネガティブワードであるため

あまり使わないようにしましょう。

お互いが気持ちよく接して、その上で治療に結びついて良い結果が得られるのが、一番いいのではないでしょうか。

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