急性帯状潜在性網膜外層症(acute zonal occult outer retinopathy: AZOOR)
通称「アズール」は類縁疾患が多く、類縁疾患も含めた”AZOOR complex”という疾患群・概念があります。
これらの疾患は、病名長過ぎ疾患群としても眼科では有名です(?)
病名長過ぎ疾患群第一弾、今回はAZOORについてまとめました。
概要・疫学・好発
1990年代にGassが提唱した疾患概念
「若年の近視の女性に好発し、光視症、盲点の拡大が症状で多く、自己免疫疾患を合併することがある」
- 若年(平均年齢30-40歳)
- 女性(65-82%)
- 近視(60-92%)
- 光視症(60-88%)
- 自己免疫疾患の合併(約30%)
- Mariotte盲点の拡大(50-85%)
- 発症前の感冒症状
診断基準
以下を満たすことで診断する(OCT、ERGはどちらかで可)
- 急性発症の視野欠損、視力低下(片眼性が多いが両眼性(10%程度)もある)
- 眼底検査、FAで異常所見を認めない(軽度の異常:網脈絡膜の色調異常や軽い乳頭発赤など はありうる)
- OCTにて視野欠損部位に一致した網膜外層の構造異常(ellipsoid zoneの欠損・不鮮明化、interdigitation zoneの消失)
- 全視野ERGにて振幅の低下、もしくは多局所ERGにて視野欠損部位に一致した振幅の低下
- その他の疾患が除外される
※FAで網膜血管のstainingや視神経乳頭からのわずかな蛍光漏出、網膜炎所見を伴うことはある
参考項目
感冒症状や光視症などは診断基準には入らない
- 発症前に風邪症状を認める
- 発症時、経過中に光視症(光がチカチカ見える)を訴える
- 硝子体に軽度の炎症所見を認める
- FAFで障害部位に一致して過蛍光を示すことがある
- 対光反射の異常を認めることもある
発症前の感冒症状や光視症は、よく言われますが、診断のための基準には入っていないようです。
原因
原因は不明
自己免疫反応による影響、感冒症状からウイルス感染などが考えられている
合併症
以下の合併症、後遺症としての所見を残すことがある
- びまん性・区域性(帯状)の網脈絡膜萎縮
- 嚢胞様黄斑浮腫
- 網膜血管の白鞘化
※脈絡膜萎縮は日本人では頻度が低い
予後
- 半年以内に3/4が症状や検査所見が固定、1/4は徐々に症状や検査所見が改善する
- 全体の1/4程度が視力0.1以下となる
- 欧米人の場合に比べると、萎縮瘢痕を残しにくく、予後は若干良好
残存視機能がどれくらいになるかは定かではないが、良い方の目の視力が0.3未満のものを重症と分類する
治療
確立された治療法はない
視野異常は自然回復することもある
自己免疫機序や炎症機序が考えられているため、重症例ではステロイドの点滴や内服が行われることもあるが、効果は不明
鑑別
眼底が正常で視力・視野障害をきたす疾患は全て鑑別疾患になり得る
- 球後視神経炎(MRI、OCT、ERG、眼球運動時痛などで鑑別)
- 自己免疫性網膜症
- 腫瘍随伴網膜症(高齢者、両眼性で進行性)
- 錐体ジストロフィ(両眼性で緩徐な進行)
- オカルト黄斑ジストロフィ(両眼性で緩徐な進行)
- 梅毒性ぶどう膜炎
- 網膜動脈・静脈閉塞症の経過後眼底がほぼ正常となったもの(網膜内層が菲薄)
など
萎縮病巣ありの場合は
- 地図状脈絡膜炎
- 網膜色素変性(両眼性で緩徐な進行)
- ぶどう膜炎の瘢痕期
- 外傷後の網脈絡膜萎縮
- CSCの陳旧例
なども鑑別となる
まとめ
診断基準には入らないものもありますが、冒頭に述べた
「若年の近視の女性に好発し、光視症、盲点の拡大が症状で多く、自己免疫疾患を合併することがある」
が重要かと思います。
- 若年(平均年齢30-40歳)
- 女性(65-82%)
- 近視(60-92%)
- 光視症(60-88%)
- 自己免疫疾患の合併(約30%)
- Mariotte盲点の拡大(50-85%)
- 発症前の感冒症状
AZOOR関連疾患(AZOOR complex)は多数あるため、今後もまとめていく予定です。
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