加齢黄斑変性(age-related macular degeneration: AMD)の診療ガイドラインが9月に改定されたので、要点をまとめます。詳細は、「新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン│日本眼科学会」をご覧ください。
目次
変更点・新規追加点のまとめ
加齢黄斑変性ガイドラインの変更点を以下にまとめました。
用語・分類の変更点
- 萎縮型AMDと滲出型AMDの名称:萎縮型(atrophic)AMDと新生血管型(neovascular)AMDに変更。
- 新生血管の名称:CNV(脈絡膜新生血管)からMNV(黄斑新生血管)に変更。
- 萎縮病変の用語:MNVを伴う新生血管型AMDにおける萎縮病巣を「黄斑萎縮」と呼ぶことを明記。
- AMDの病期分類:早期AMD、中期AMD、後期AMD、末期AMDに分類。
診断基準の変更点
- 年齢基準の削除:診断基準から年齢を削除(従来は50歳以上の年齢制限あり)。
- 漿液性PEDのサイズ基準の削除:新生血管型AMDの診断における漿液性PEDのサイズ基準を削除。
- MNVの分類変更:1型+ポリープ状病巣なし(type1 MNV)、1型+ポリープ状病巣あり(PCV)、2型(type2 MNV)、1+2型(type1+2 MNV)、3型(RAP)。
初期病態と発症背景に関する追加点
- パキコロイドの記載追加:パキコロイド疾患およびパキコロイド新生血管症(PNV)に関する記述を追加し、新生血管型AMDに含めることを明記。
- 遺伝子多型の記載追加:AMD発症に関与する遺伝子多型に関する記述を追加。
治療に関する変更点
- 抗VEGF薬の種類の追加:使用可能な抗VEGF薬としてブロルシズマブ、ファリシマブを追加。
- 維持期の投与方法: treat-and-extend投与法の有効性を追記し、固定投与法やPRN投与法と合わせて、患者の状況に応じて選択することを推奨。
- PDTの推奨変更:PDT単独ではなく、抗VEGF薬併用PDTを推奨。
- レーザー光凝固の推奨変更:中心窩に近いMNVへのレーザー光凝固は適さないことを明記。
- 血腫移動術に関する追記:血腫移動術の際に抗VEGF薬硝子体内注射やtPA併用についても言及。
- ロービジョンケア:高度な視機能低下を来した患者にはロービジョンケアを積極的に行うことを推奨。
病期分類に関する詳細
新しく作られた早期、中期、後期、末期AMDのそれぞれの病期に関してです。
早期AMD
- 中型(軟性)ドルーゼン(長径63μm以上125μm未満)を1個以上認めるもの。
- 小型(硬性)ドルーゼン(長径63μm未満)は生理的範囲内の加齢性変化とする。
中期AMD
- 大型(軟性)ドルーゼン(長径 125μm 以上)が1個以上、もしくはRPE異常、もしくは網膜下ドルーゼン様沈着物がみられるもの。
後期AMD
- MNVを有するもの。(PNVを含む)
- MNVの存在が確認できない漿液性PEDは中期AMDに分類。
末期AMD
- 線維性瘢痕や囊胞様黄斑変性に伴う網膜外層の萎縮性変化によって高度の視力低下がみられるもの。
加齢黄斑変性関連のガイドラインの変遷
参考までに加齢黄斑変性の治療や診療ガイドラインの変遷を下にまとめました。抗VEGF薬の治療も登場してまだ20年も経たず、診断基準等含めどんどんアップデートされている領域の一つですね。
- 2004年 国内承認された光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)
- 2004年 加齢黄斑変性症に対する光線力学的療法のガイドライン
- 2005年 ポリープ状脈絡膜血管症の診断基準
- 2008年 国内で使用可能となった抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)薬の硝子体内注射
- 2008年 加齢黄斑変性の分類と診断基準
- 2012年 加齢黄斑変性の治療指針
- 2013年 パキコロイドという新しい概念
- 2015年 萎縮型加齢黄斑変性の診断基準
- 2018年 国際的ガイドラインが発表
- 2020年 CNVをMNVと呼ぶことが多くなった
まとめ
- 加齢黄斑変性のガイドラインが2024年9月に改定された
- 滲出型AMD→新生血管型AMD
- CNV(脈絡膜新生血管)→MNV(黄斑新生血管)
- PNV(パキコロイド新生血管)追加
- AMDの病期は、早期AMD、中期AMD、後期AMD(治療対象)、末期AMD
- 年齢基準削除、PEDの診断基準削除
- ブロルシズマブ、ファリシマブの追加
OCT、OCTAと機械が進歩して、さらに抗VEGF薬の種類も増え、どんどんアップデートされている領域ですね。
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