A-V斜視の原理・病態と、その手術に関してイラストを交えて記載しました。
斜視は複数の筋が絡むと複雑ですが、筋の作用方向・位置・強さという物理的な考え方で多くは理解できます。
イラスト含め細かい内容になっていますが、一度理解できれば思い出せると思いますので、是非ご覧ください。
斜視に関しては眼球運動の基礎がわからないと難しいので、まだ読んでいない方は下記記事をまずご覧ください。
A型斜視とは
A型斜視とは、眼位が上で狭く、下で広いもの(”A”のような形になる。)
A型内斜視
A型内斜視は、上方視で内斜視、下方視で普通。
A型外斜視
A型外斜視は、上方視で普通、下方視で外斜視。
V型斜視
V型斜視とは、眼位が上で広く、下で狭いもの(”V”のような形になる)
V型内斜視
V型内斜視は、上方視で普通、下方視で内斜視。
V型外斜視
V型外斜視は、上方視で外斜視、下方視で普通。
- A型斜視では上方視より下方視で10プリズム以上開散し、V型斜視では下方視より上方視で15プリズム以上開散する
- A型斜視では上斜筋過動を、V型斜視では下斜筋過動伴うことがある(V型外斜視で75%以上に下斜筋過動を伴う)
- 頻度は、V型外斜視>A型内斜視>>A型外斜視・V型内斜視
- 顎上げ、顎引きの代償頭位を取る
A型内斜視:下方視がラクなので顎上げ
V型外斜視:下方視がラクなので顎上げ
A型外斜視:上方視がラクなので顎下げ
V型内斜視:上方視がラクなので顎下げ
A-V斜視の原理
斜筋など様々な要素が絡むと複雑になりますが、簡易的に考えると
水平筋(外直筋、内直筋)の付着位置が、本来の場所から上下にずれていることが原因です。
ちょっとごちゃごちゃしていますが、以下のイラストを理解できれば、A-V斜視は理解できるので非常に重要なイラストです。
上イラストは、右眼の外直筋もしくは左眼の内直筋をイメージして
- 筋付着位置が通常のもの(真ん中の行)
- 筋付着位置が上方のもの(上の行)
- 筋付着位置が下方のもの(下の行)
と分け、それぞれ正面視(左側の列)、上方視(真ん中の列)、下方視(右側の列)の状態を描いたものです。
青矢印は筋の走行方向へのベクトル、緑矢印はそれをxy軸に分解したベクトルを表しています。
ピンク◎は、筋の走行が水平であるもの、すなわち水平筋が水平方向に一番強く働いている状態に記しています。
要するに
- 水平直筋の付着位置が下にずれると、上方視で水平方向に最大作用を示す
- 水平直筋の付着位置が上にずれると、下方視で水平方向に最大作用を示す
ということになります。
A-V斜視の斜視手術について
まず要点をまとめておきます。
- 斜視手術の基本は、第一眼位(正面)と下方視での眼位矯正を目標に手術を行う
- 斜筋の過動、遅動がなければ水平筋の前転・後転に付着部位の上下方向への移動を行う
- A型斜視では、内直筋を上方、外直筋を下方に移動する
- V型斜視では、内直筋を下方、外直筋を上方に移動する
- 斜筋の過動、遅動があれば斜筋手術を併用する
- 斜筋過動がある場合は、斜筋切除術などの斜筋減弱術を行う
続いて具体的な考え方について。
上のイラストに合わせて、V型外斜視(斜筋異常を伴わないもの)はどのような状態かというと
- 上方視で外直筋が水平方向に強く働く=外直筋の下付き
- 上方視で内直筋が水平方向に弱く働く=内直筋の上付き
つまり斜視手術では、
- 外直筋を上方視で弱める=後転術+付着位置を上方向に移動
- 内直筋を上方視で強める=前転術+付着位置を下方向に移動
となるのですが、実際には減弱術のみで効果が充分であったり、書籍にもあまり細かくは書かれていないです。つまり、外斜視では外直筋を、内斜視では内直筋を移動させるだけでよいとする内容です。
同様にして、A型内斜視では
- 上方視で内直筋が水平方向に強く働く=内直筋の下付き
- 上方視で外直筋が水平方向に弱く働く=外直筋の上付き
となり
- 内直筋を上方視で弱める=後転術+付着位置を上方向に移動
- 外直筋を上方視で強める=前転術+付着位置を下方向に移動
つまり、
弱めたい筋を後転術による減弱と併用して、弱めたい注視方向(上下)と同じ方に移動させれば良いということになります。
まとめ
- A-V斜視は、内外直筋の前後転+付着位置の上下偏位を併用する
・A型斜視では、内直筋を上方、外直筋を下方に移動する
・V型斜視では、内直筋を下方、外直筋を上方に移動する - 斜筋過動・遅動を伴う場合は、斜筋手術を行う
簡単なイラストを描けば思い出せるはずかと思いますので、イラスト描きましょう。
斜視関連は頭で考えるとごちゃごちゃしやすいです。
今回はイラストを描くとわかりやすい例ですが、他にも麻痺性斜視の麻痺筋同定などでは、筋の作用方向を一つずつ書くと確実にわかります。以下の記事は上下斜視の麻痺筋を同定するのに非常に有用な考え方ですので、ぜひご一読ください。
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