黄斑円孔の手術時期に関するレビューを紹介します。
黄斑円孔は、緊急度は高くないですが、早めの手術治療を行うことが望ましいとされる疾患です。
手術時期に関していつ行えばよいか?結論からいうと
「早めに手術しておいたほうが、術後の視力もよくなりやすいため、可能な範囲で早めの時期」ということになります。
自施設では、発症後まもない方に関しては可能な限り1~2週間以内に手術しています。緊急性はないので当日手術などの対応はしていません。
今回紹介する内容の論文は以下になります。
対象、方法について
12個のRCTから得た、940人、940眼を対象としたメタアナリシスです。(年齢の中央値は68歳)
発症(症状出現)からの治療までの期間は
- 3か月以内が239眼(25.6%)
- 3~6か月が296眼(31.8%)
- 6~12か月が279眼(29.9%)
- 12~24か月が76眼(8.2%)
- 24~72か月が42眼(4.5%)
となっています。(治療時期の中央値は6か月)
- 最小円孔径の中央値は492µm
- 術前最高矯正視力の平均はは0.84 logMAR=小数視力0.15程度
- 術式はILM peelingが88%、ILM flap テクニックを用いたものが12%
発症から3か月以上経過しているものが75%近くあり、自施設との症例と比べるとかなり遅めです。また、最小円孔径>400µmはILM flapを使用されたりする論文もあるなかで、やや大きめかもしれません。術前の視力は小数視力0.1~0.3程度が多いと思います。
結果について
結果について羅列し、とくに重要と思われる部分を強調しておきます。
手術までの期間と円孔径、術後視力、初回閉鎖率の関係
- 術前の期間が長いほど、円孔径は大きくなり、術後の視力も下がる(回復しにくい)
- 術前の期間が長いほど、初回手術における円孔閉鎖率が下がる
- 3か月以内が211/239眼(88.3%)
- 3~6か月が253/296眼(85.5%)
- 6~12か月が218/279眼(78.1%)
- 12~24か月が46/76眼(60.5%)
- 24~72か月が31/42眼(73.8%)
- 初回手術後の円孔閉鎖率の平均は81.5%
- 発症からまもない黄斑円孔では円孔径にばらつきがあった
時間が経てば経つほど、悪化していき、手術しても回復しにくくなります。
円孔閉鎖率の上昇に関連する因子
- ILM peeling
- ILM flapテクニック
- 術前の視力がよいこと
- 術後のうつぶせ姿勢
- 最小円孔径が小さいこと
ILM peelingは現在一般的に行われている手技です。円孔径が大きいものに対してはILM flapを埋め込んだりかぶせたりするテクニックで、円孔閉鎖率が高くなります。術前の視力がよいこと、円孔径が小さいことは前述の手術期間に関係するので、間接的に円孔閉鎖率に関わるかと思います。うつぶせ姿勢に関しては最近議論があるところですが、自施設では閉鎖確認まではなるべくうつぶせ姿勢としています。
円孔の初回閉鎖6か月後の視力の予測因子
- 手術までの期間
- ILM flapテクニック
- 長期保留ガス
- 術前の視力
- 術前後の有水晶体/有水晶体の状態(白内障手術を併用していない?)
術6か月における最高矯正視力の中央値は0.5 logMAR視力=小数視力0.3程度
手術時期が早いと視力が1.0程度まで上がる症例は結構ありますが、歪視が多少残存することが多いです。使用するガスはこれも議論があるところで、自施設ではSF6を使っておりますが、再発例や円孔が大きい例やその他特殊例にはC3F8を使用することもあります。小さい円孔の場合空気でもよさそうな雰囲気が最近はありますね。
「術前後の有水晶体/有水晶体の状態」は、よくわかりません。白内障がそれなりにあれば手術併用したほうが視力は改善すると思われます。逆に水晶体温存だと、術後の白内障の進行により、視力にマイナスでの影響を及ぼすと思います。
初回閉鎖が得られた例、得られなかった例ともに術後視力に関連する因子
- 手術までの期間
長期間放置しないことが大切ですね。
術後の視力結果が0.3 logMAR(小数視力0.5)以上の達成に関連する因子
- 手術までの期間
- 術前の視力
- 最小円孔径
参考:自施設において
自施設においては、
- 1-2週間以内を目安に手術
- 50歳以上が多いので基本的に白内障手術併用
- ILM peelingは全例、ILM flapは円孔径が大きいものに限定
- 置換ガスはだいたいSF6
- うつぶせ期間は原則OCTで閉鎖を確認するまで(最短半日~1日)
という感じでやっています。
手術時期によっては結構1.0以上の視力も出る疾患なので、喜ばれますし、やりがいがあります。ただし歪みや中心の見え方の異常はどうしても残ります。
まとめ
- 黄斑円孔は、発症後時間が経つほど、円孔径が大きくなり、術後の円孔閉鎖率が下がり、術後の視力も回復しにくくなる
- 手術までの期間が円孔径、視力、円孔閉鎖率に関与し、早めの予定手術が望ましい
ごく小さな円孔は自然閉鎖することがありますが、この論文では、その理由で手術を遅らせることが術後の予後を悪化させる可能性があるとし、早めの手術を推奨していますね。
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