メラノーマ関連網膜症(MAR)は、自己免疫性網膜症(AIR:autoimmune retinopathy)における腫瘍随伴性のタイプとして、癌関連網膜症(CAR)とともに知られている疾患です。
自己免疫性網膜症(AIR:autoimmune retinopathy)は、網膜抗原に対する血清自己抗体によって引き起こされる自己免疫性網膜変性疾患の総称です。AIRは腫瘍随伴性(paraneoplasitic)と、非腫瘍随伴性(non-paraneoplastic)に大きく分類されます。
- 自己免疫性網膜症(AIR)
- 腫瘍随伴性(paraneoplasitic AIR)
- 癌関連網膜症(CAR)
- メラノーマ関連網膜症(MAR)
- 非腫瘍随伴性(np AIR)※np; non-paraneoplastic
- 腫瘍随伴性(paraneoplasitic AIR)
CARに関しては下記をご参考にしてください。
疫学
- AIRは眼科クリニックにおける全患者の1%未満
- そのうちの非腫瘍随伴性(npAIR)が最も多い
- 腫瘍随伴性では癌関連網膜症(CAR)が一般的であり、メラノーマ関連網膜症(MAR)は多くない
- CARおよびnpAIRは女性に多い
- MARは男性に多い
レビューからの引用ですが、母数が大きくないため詳細な疫学はわからないような状況だと思われます。
一般的に、腫瘍随伴性よりも非腫瘍随伴性が多く、腫瘍随伴性のなかでは癌関連網膜症が多く、メラノーマ関連網膜症はかなり珍しい疾患と言えます。
原因抗原
- 抗TRPM1抗体
- 抗網膜双極細胞抗体
- 抗ベストロフィン1抗体
癌関連網膜症(CAR)においては、抗リカバリン抗体、抗エラノーゼ抗体が有名。
症状
- 夜盲
- 視力障害
- 視野障害など
症状はCARよりも弱い場合が多い。
所見・診断
CAR同様、明確な診断基準はない。
臨床症状、検査所見、全身癌の診断、抗網膜自己抗体検査などを組み合わせて行う。
ただし、MARに関しては眼底所見やOCTで異常は見られない。ERGが特徴的である。
ERG
フラッシュ最大応答が陰性型で、完全型停在性夜盲と同様の波形を示す。
- 杆体応答(-)→平坦型
- フラッシュ最大応答→陰性型
- 錐体応答→a波の底が長くなる
後天的にこのようなERGを示す疾患はない。
治療
CAR同様に、プロトコールは確立されていない。
癌を治療しても直接の治療にはならないが、循環抗体量が減る可能性がある。
- ステロイド全身投与(内服・点滴)、IVTA、STTAなど
- 免疫抑制薬
- IVIG(静脈内免疫グロブリン)療法・血漿交換(神経変性発症前であれば)
まとめ
- MARは非常にまれな疾患
- 男性に多い
- 原因抗体は抗TRPM1抗体、抗網膜双極細胞抗体など
- 眼底所見は異常がない
- ERGでフラッシュ最大応答が陰性型で、完全型停在性夜盲と同様の波形(後天性でこのような結果を示す疾患はない)
非常に珍しい病気ではありますが、
眼底が綺麗で問題なさそうである夜盲、視力低下、視野障害のかたを見たら、もちろん原因精査のためのERGや全身精査を行っていきますが、ERGで怪しいと感じた際、また年齢性別などからMARを疑ったら採血検査を検討しましょう。
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