網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occlusion: CRVO)についてのまとめです。
目次
概要
視神経の篩状板付近での網膜中心静脈の循環障害により生じる。通常網膜中心静脈は1本であるが、2本存在する場合があり、その1本が閉塞した場合は半側網膜中心静脈閉塞症(hemi CRVO)と呼ぶ。
- 有病率 1000人あたり0.8人(1250人に1人)
- 患者数 全世界で250万人程度
- 65歳以上の高齢者に多い
- 危険因子 緑内障、高血圧、糖尿病、動脈硬化、加齢
分類
虚血性、非虚血性に分類される。
CVOS(Central Vein Occlusion Study)で、フルオレセイン蛍光眼底造影検査で10乳頭面積以上の無灌流領域をきたすCRVOを虚血型としており、現在はそれが定着している。
虚血性
- 無血管野(NPA)が10乳頭面積以上のものをいう
- 無血管野、すなわち網膜血管が閉塞し灌流がない範囲が10乳頭面積以上のもの
- 最大の注意点は、虚血性CRVOは高頻度に血管新生緑内障へと進行し、失明に至る可能性があること
- そのため早急に汎網膜光凝固などの治療が必要となること
非虚血性
- NPAが10乳頭面積未満のものをいう
- 非虚血性の段階では血管新生緑内障はほぼ生じない
- しかし非虚血性から虚血性へと進行するものがあるのでフォロー、検査は適宜繰り返すこと
症状
- 主に黄斑浮腫による急激な視力低下
- その他、黄斑虚血、硝子体出血、牽引性網膜剥離、二次性網膜前膜、血管新生緑内障などによる視覚障害をきたす可能性がある
所見
- 網膜静脈の拡張・蛇行
- 網膜神経線維層の刷毛状出血
- 視神経乳頭腫脹
- 軟性白斑(多発する場合は虚血型が疑われる)
- 黄斑浮腫(嚢胞様黄斑浮腫が典型)
- 無血管野からの網膜新生血管、硝子体出血、牽引性網膜剥離、血管新生緑内障など
など
検査
虚血型の判断に、Hayrehらは以下の検査を総合的に判断すべきであると報告している。
- 視力
- 眼底所見(OCT含む)
- フルオレセイン蛍光眼底造影
- 対光反射、RAPD
- 動的視野検査
- 網膜電図
視力
- 初診時視力が悪いほど予後は悪い傾向
眼底所見
- 主に上記眼底所見を確認しCRVOの診断をする
- 軟性白斑が多いと虚血型が疑われる
OCT
- 黄斑浮腫があれば抗VEGF薬治療を(浮腫がない場合は抗VEGF薬の適応はない)
- 虚血が強い場合は網膜内層の虚血を反映して、網膜内層が高輝度となる(網膜動脈閉塞症に似る)
- そのような症例は網膜動脈閉塞症同様、時間経過で内層が菲薄することが多々ある
フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)
- 網膜虚血(無灌流領域)の判定のために行う
RAPD
- 虚血型では陽性、非虚血型では陰性となることが多い
動的視野検査
- 虚血型では大きな中心暗点を示す
網膜電図
- 虚血型ではb派の減弱が見られる
- 30HzフリッカーERGの潜時は網膜毛細血管の非灌流の程度と相関する
- 発症直後のERGは不安定であるため行うのであれば3週間程度たってからがよい
治療
主に以下の3つに分けて治療が必要となる。
- 黄斑浮腫に対する治療
- 新生血管予防のための治療
- 合併症に対する治療
黄斑浮腫に対する治療
黄斑浮腫に対する、治療の第一選択薬は抗VEGF薬硝子体注射
※適応はルセンティス、アイリーアのみ
ステロイド局所注射(硝子体内、テノン嚢下)などが行われることもあるが、基本的には抗VEGF薬一択
新生血管予防のための治療
虚血型CRVOは新生血管予防に、汎網膜光凝固(PRP)を行う
黄斑浮腫があり抗VEGF薬注射を投与中は、注射自体がVEGFを抑制するので進行しにくい
合併症に対する治療
- 網膜新生血管からの硝子体出血や牽引性網膜剥離には、硝子体手術を
- 血管新生緑内障には、緑内障手術を
そこまでに進行しないうちに適切な加療を。
合併症の頻度
- 虚血型CRVOの約50%が半年以内に虹彩NVを生じ、約30%が血管新生緑内障を発症する
- 非虚血型CRVOの約33%が3年以内に虚血型CRVOへ移行する
まとめ
- 虚血型(NPA>10乳頭面積)、非虚血型(NPA<10乳頭面積)
- 黄斑浮腫には抗VEGF薬を
- 虚血型には汎網膜光凝固を
- 非虚血型でも虚血型に移行することがあるので注意(たまにFAやOCTAを)
永遠と抗VEGF薬の硝子体注射を繰り返す症例も多く、なかなか互いに大変な疾患の一つかと思います。
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