物が見える/目で見る仕組み 視覚情報と網膜と脳(後頭葉)

物が見えるまでの仕組みについて解説します。

視覚情報はヒトが受け取る情報の80%程度を占めていると言われます。

どのような仕組みで「見る」ことができているのか。また、どのようになると見えなくなってしまうのか。

目次

物が見えるあらすじ

  1. 外の視覚情報(物や景色など)が目に入る
  2. 視覚情報を網膜の細胞が受け取る
  3. その情報を脳に伝えて、脳で見ている

この3つになります。

大きく3段階で見ていることになります。どれもが非常に重要です。

これら3つは順番になっているので、①がダメなら②、③が正常でも見えません。①をクリアし、②をクリアし、③をクリアして初めて、「見える」のです。

順番に説明していきます。

①外の視覚情報が目に入る

まずは目に光が入ってこないと見えません。

当たり前ですが、目を閉じていたら何も見えません。瞼で目の中に入る光を遮っているからです。

目の前に遮る物があったら、その先は見えませんね。

「見る」ために視覚情報を受け取るのは、目の「網膜」になります。

網膜は目の内部を一番内側で裏打ちしている膜

情報を受け取るのは目の中の網膜なので、細かく言うと、「網膜より手前に遮るものがあると見えない」ことになります。

そのため、網膜より手前の目の構造は、全て透明になっています。透明じゃないと光が綺麗に届かなくなるため、見にくくなります。


網膜より手間の組織は「透明」じゃないと見にくくなる
  • 硝子体:卵の白身のような透明なゼリー状の物質です。
  • 水晶体:目の中のレンズで、ピント調節の役割があります。
  • 前房 :さらさらの水分で目の細胞への栄養などの役割があります。
  • 角膜 :目の表面のレンズで、光を集める役割などがあります。

光が届かなくて見えなくなる例

例としてイラストで説明していきます。

目の前に遮るものがあると見えないパターン

遮断しているものが完全に光を通さないものであれば、リンゴは見えません。

当たり前ですね。


水晶体が汚れてそれより奥に光が届きにくいパターン

目のなかに濁りがあって光を遮断していれば、同様に見えなくなります。

濁りが軽度であればリンゴは見えますが、濁りが強くなると見えにくくなり、非常に濁りが強ければほぼ見えなくなります。

→これが白内障です。


目の中(硝子体)が濁ってそれより奥(網膜)に光が届きにくいパターン

目のなかの硝子体が濁っているパターンです。

同様に濁りの程度により見え方は異なりますが、濁りが強ければほとんど見えなくなります。

→硝子体出血や硝子体混濁などという病名があります

②視覚情報を目の細胞が受け取る

視覚情報を受け取る「網膜」が痛んでいるパターン

網膜より手前の目の構造は、「光を通すため」のものということでした。

そして光情報を受け取るのが、網膜です。網膜は神経細胞、すなわち脳と同じような細胞でできています。

従って、網膜が病気などで痛むと、後遺症が残ります。

おそらく多くの人が知っていると思いますが、脳梗塞をしたら麻痺などの後遺症が残る可能性がありますよね。それと同じようなことです。

網膜も脳と同じ細胞でできているので、病気などで痛むと後遺症となって、見えにくくなります。


網膜の中心は「谷」になっている

網膜の中心の部分を黄斑(おうはん)と言い、黄斑の中のド真ん中を中心窩(ちゅうしんか)と言います。

この網膜の黄斑の中心に近いところほど、見える視界の中心に当たります。

すなわち真ん中(黄斑)が痛むと、視界の真ん中が見えにくくなり視力が下がります。(中心窩の中心を中心小窩などと言いますが細かすぎるので省略)

真ん中から離れたところの網膜が痛む場合は、視力は下がりません。見えている視界の端のほうが見えにくくなります。

③その情報を脳に伝えて、脳で見ている

さて、網膜は光の情報を脳に伝えるための信号に変換します。

その信号が神経を通って脳に伝えられます。

MSDマニュアル(家庭版)より引用

目からの情報は網膜から神経線維となって脳に向かい、後頭部の脳(後頭葉)にまで神経が伸びています。

その後頭葉こそが、目の情報がたどり着く第一の最終地点であり、後頭葉で「物が映る」ことになります。

第一と言ったのは、細かく言うと第二以降の終着点があります。

この後頭葉を一次視覚野と言い、次の場所(側頭葉と頭頂葉の一部)が二次視覚野と言います。

二次視覚野では映っている映像に対する「認識」や「動作」を司るところで、二次視覚野が障害されると「目には映っているはずが認識できない(空間無視)」や、「映っているはずの物に対する動作の障害」という高次元の難しい話になります。

細かく知りたい方はこちらを参考に→視覚経路(脳科学辞典)

視交叉を通り、情報は左右の脳に送られる

左脳、右脳と聞いたことがあるかもしれません。

脳は真ん中でつながっていますが、右側と左側に分かれています。

右脳は感情、イメージ、左脳は論理的などと言われます。

MSDマニュアル(プロフェッショナル版)より引用

目の情報は、途中で交叉して、両方の後頭葉に送られます。

つまり右眼の情報も、左眼の情報も、最終的には両側の後頭葉に送られます。

従って上図のように、障害される場所によって、片眼が見えなくなったり、両目の同じ方向が見えなくなったり、両目それぞれの耳側が見えなくなったり、様々な視野障害が生じます。

まとめ

  1. 目に綺麗に光が入ること
  2. 網膜が光を受けること
  3. その情報が脳(後頭葉)に伝わること

こうして初めて、「物が見える」という状態になります。逆にこれらのどこが障害されても、見えにくく、見えなくなります。

目の情報は流れゆく連続映像=動画と一緒です。

動画のデータ量って、音声だけより写真だけよりも圧倒的に多いですよね。

と考えると、視覚情報というのはヒトが受け取る情報の中でも非常に規模が大きいものだなと実感できると思います。

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