ある病気に関して、検査が陽性なら100%その病気で、検査が陰性なら100%その病気ではない、という完璧な検査は存在しません。
検査が陽性、陰性はどのように決まっていくのか説明します。
コロナ感染と検査結果の計4パターン
- コロナに感染していて、検査で陽性となる
→真陽性 - コロナに感染していなくて、検査で陰性となる
→真陰性 - コロナに感染しているのに、検査で陰性となる場合
→偽陰性 - コロナに感染していないのに、検査で陽性となる場合
→偽陽性
検査結果と実際の感染の有無は、必ずこのどれかに当てはまることになります。
冒頭に述べた完璧な検査が仮に存在するとしたら、③④はゼロになります。非常にシンプルでわかりやすいですよね。
ただし実際にはそうはなりません。なので、③罹っているけど陰性と出てしまうパターン、④罹っていないのに陽性と出てしまうパターンが存在します。
これら③④のパターンを減らしたいのですが、どのようにするかは人為的に決まり、検査の設定値(カットオフ値)を変えることで変わります。
新型コロナPCR検査の感度・特異度
新型コロナのPCR検査は高くて感度は80%、特異度は100%近く(以下では99%としておく)と言われます。これはどういうことか?
- 感度 :病気がある人を、陽性と正しく判定する確率
- 特異度:病気がない人を、陰性と正しく判定する確率
感度80%とは、コロナ感染者100人を検査したら20人は陰性と間違えて出るよということ。
特異度99%とは、コロナ非感染者100人を検査したら99人は陰性と出るよということ。間違えて陽性と出ることはほぼないよということ。
陰性と出た場合には、非感染者の人ほぼ全員と、感染者の20%が含まれているということ。陽性と出た場合には、実際の感染者のみで非感染者はほぼいないよということ。
→陰性だからと言って感染していないとは言えない、陽性だったらほぼ感染していると言える。つまり、陰性証明はコロナに感染していないことを証明することにはならない、ということ。
感度と特異度を逆にしてみましょう。
感度99%とは、コロナ感染者100人を検査したら99人陽性と判定できるよということ。間違えて陰性と出ることはほぼないということ。
特異度80%とは、コロナ非感染者100人を検査したら20人は陽性と間違えて出るよということ。
陽性と出た場合には、実際の感染者と非感染者の20%が含まれているということ。陰性と出た場合は、ほぼ陰性で感染しているけど陰性だったということは少ないということ。
→陽性だからと言って感染しているとは言えない、陰性だったらほぼコロナにかかっていないと言える。つまり、感染していない陽性患者がどんどんあぶり出されてしまい、感染者扱いされ医療を逼迫させることになる。
ウイルスがいることと感染していることは別
菌で考えるとわかりやすいです。
人間の身体には常在菌といって、細菌がたくさん付いています。皮膚にも、口の中にも、目の結膜にも、消化管(腸内細菌)にも。これらは感染しているわけではありません。そこにいるだけです。
しかし体の免疫機能(防御機能)が下がると、いるだけのはずの菌が爆発的に増殖して、感染することがあります。
ウイルスも同様で付着しただけでは感染とは言いません。
つまり、感染とは感染源がある一定数以上に増殖した状態を言い、体調不良などの症状を来すことで感染症となります。
設定値(カットオフ値)で感度・特異度は変わる
コロナをできる限りあぶり出したい場合・・・ちょっとでもウイルスがいたら陽性と出る(カットオフ値が低い)検査キットを作ればokです。
まったくウイルスが付着していなければ陽性とはならないですが、感染もしていないのに少し付着していたら陽性となるし、もっとウイルス量が多くなって感染してても勿論陽性となります。
逆に、ウイルスが爆発的に増殖して発熱などの症状がありいかにも感染症を起こしている人には陽性と出る(カットオフ値が高い)検査キットを作った場合、感染症を起こしている人には陽性となりますが、付着しただけの人は陽性にはならず、また、感染しているけどまだ爆発的に増殖していない段階の(症状がない)人は陽性とはならないことになります。
つまり、検査の設定値によって検査の性質は変わってくるということです。
実際には、ROC曲線というものから、ウイルスがどれだけいたら陽性と判定するかの基準(カットオフ値)を設定し、感度と特異度が決定されます。陽性的中率・陰性的中率など他の要素もありますが、今回は省きます。
まとめ
- 検査は100%ではない
- コロナPCR陽性者はほぼ陽性
- コロナPCR陰性は陰性証明にはならない
- 設定値(カットオフ値)によって検査の性質は変わる
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