網膜剥離ってどんな病気か知っていますか?
なんとなく聞いたことがあるという方も多いかもしれません。
網膜剥離は、目の病気のなかでもかなり重要でメジャーな病気でありながら
放置しておくと最悪失明するという、重症な病気でもあります。
しかもその悪化スピードは速く(網膜剥離のタイプにもよりますが)、早めに治療(手術)が必要となってきます。
- 失明しないためにはどうしたよいのか
- 網膜剥離かもしれないと疑う前兆はどんなことがあるのか
- どういったことが原因で起こるのか
などを解説していきます。
網膜剥離はいくつか種類がありますが、ここでは一般的で頻度が多く、手術が必要となる裂孔原性網膜剥離(れっこうげんせいもうまくはくり)をメインにイラストを多数交えて説明します。
網膜とは
これを理解するためには、目の構造、目の働きを理解する必要があります。
目は光の情報を受け取って、それを脳に伝える役割をしています。
簡潔にまとめると、目は
- 光を集める部分
- 光を受け取る部分
の2つに分かれています。
光を受け取る部分の組織を「網膜」といい、網膜に光を集めるために網膜より手前の組織はすべて透明になっています。
※網膜の手前にある透明な組織:硝子体(しょうしたい)・水晶体・房水・角膜
網膜が光を受け取って、視神経という神経のくだになって脳につながっていきます。
ものが見える詳しい原理は下記記事を参考にどうぞ。
網膜は上のイラストのように、目の内部を裏打ちしている膜です。
網膜剥離とは
この目の内側に張り付いている網膜が剥がれてしまう(内側に浮き上がってしまう)のが、網膜剥離です。
部分的に網膜に穴があくことで、そこからどんどん網膜が引っ張られて剥がれていきます。
剥がれた網膜は時間が経つと細胞が死んでしまい、光を受け取る役割を果たせなくなります。
網膜剥離は進行していく病気ですので、時間が経つと全ての網膜が剥がれ「全網膜剥離」となります。
全ての網膜が剥がれると、全ての網膜がだんだん死んでいきますので、失明します。
しかし手術をすると視力がある程度回復しますので、剥がれた網膜がすぐに死んでしまうわけではありません。
ただし痛んだ網膜は基本的には元には戻らないので、手術はなるべく早くに受けたほうがよいです。
- 網膜は光を受け取る役割をしている
- 網膜で受け取った光の情報を神経を通して脳へ伝えている
- 網膜に穴が開いてそこから引っ張られて網膜が剥がれるのが「裂孔原性網膜剥離」
- 自然には回復せず、どんどん悪化していくので早めの手術が必要
網膜剥離の原因
網膜剥離の原因、すなわち膜が本来張り付いているところから剥がれていく(浮き上がっていく)原因についてです。
大きく3つに分かれます。
引っ張られて剥がれる(牽引性)
ラップやセロファンを机の上にまっすぐに広げて状態で、それをつまんで引っ張ったら浮き上がりますよね?そんな感じです。
引っ張る力が目の網膜に働いて、網膜が剥がれている状態です。(穴は開いていないタイプです)
進行はそこまで早くはありませんが、牽引性は一般的には手術が難しく重症な網膜剥離になります。
穴があいて剥がれる(裂孔原性)
こちらがメインの網膜剥離です。
引っ張られて穴が開くパターンと、膜が横に引き伸ばされて薄くなって穴が開くパターンがあります。
網膜が引っ張られるタイプのほうがより一般的で高齢者に多いです。
一方、網膜が引き延ばされて薄くなって穴があくタイプは若くて、近視が強い人に多いです。
裂孔原性は、①の牽引性とは区別しますが、実際には牽引も関与します。(牽引性は穴が開いていない)
引っ張る原因は、目のなかにある硝子体というゲル状の物質です。
穴が開くとその内部に水が流れ込み、内部からも圧が加わり剥がれるスピードが速くなります。
網膜剥離のなかで最も一般的なタイプで、穴の大きさにもよりますが進行スピードは早いです。
水分がにじみ出て剥がれる(滲出性)
イメージとしては、水ぶくれの状態です。
水は血管から出てきます。血液の中の血漿という赤い成分以外のもので、透明な液体になります。
血管から水が漏れ出るということは、血管がぼろぼろであったり血管に炎症が起きていたりしているので、その原因を調べて治療を行います。
網膜剥離の前兆・症状と経過
一般的に言う網膜剥離は、②の裂孔原性網膜剥離になります。網膜に穴が開いて、そこから網膜剥離が進行します。
ここでは裂孔原性網膜剥離の前兆、症状に関して説明します。
- 網膜は刺激されると(引っ張られると)光を感じるため、ちかちかと光視症を感じることがあります。
- 引っ張られた網膜に穴が開いたあくと、網膜やその下にある組織の細かな細胞が眼内に飛散します。そのため初期にはそれらが見えて、ぱらぱら、ちらちらと「飛蚊症」を感じることがあります。
- その後網膜剥離が進行すると、剥がれた部分の網膜は光を感じにくくなります。すなわち、剥がれた部分の範囲がぼやけて見えにくくなる「視野障害」を生じます。基本的には視界の端の方から始まります。
- 網膜剥離が進むと剥がれた部分が眼内にひらひらと漂うので、カーテンに風が当たったときのように、ひらひらと見えにくい部分が漂うような見え方をすることがあります。
- 剥がれた部分が進行して、視界の中心まで来ると視力が低下します。中心まで来ると手術治療を行っても、ものが歪んで見える「歪視」が残ることが多いです。
- 更に時間が経つとすべての網膜が剥がれて、すべての視界がぼやけてきます。そしてそのまま放置すると、最終的に失明します。
というような流れで症状がでて、進行していき、見えなくなっていきます。
網膜剥離の治療・手術
裂孔原性網膜剥離は、剥がれた網膜の程度、剥がれ始めた網膜の場所、穴の個数などによって治療のやり方が変わることがあります。
現在では硝子体手術という術式が多く取られています。
レーザー治療(網膜光凝固術)
網膜剥離の初期の段階で、穴は開いているが剥がれている範囲が小さいときは、レーザー治療で落ち着くことがあります。
レーザー治療では、剥がれていない部分の網膜が剥がれていかないように、土台と網膜をレーザーで焼き付ける治療となります。目の中へレーザーを当てます。
剥がれている範囲が広い場合は、レーザーだけでは治すことが難しく、外科的手術を行います。
外科的手術
手術は、 目の外側から当て物を押し当てて目を内側にへこませることでくっつける手術(強膜内陥術) と、目の中を操作して剥がれている部分を直接くっつける手術(硝子体手術)があります。
どちらも90%程度で一度の手術で完治しますが、重症例では何度も剥がれてきて再手術となることがあります。
強膜内陥術
網膜の土台自体を外から押して内側にへこませます。
若い人や、初回治療の人などに行われます。
現在は次に述べる硝子体手術を優先して行われることも多いです。
剥がれている範囲が大きい場合や、穴がたくさんある場合、穴が見つからない場合などには行いません。
目の中を直接いじらないので、術後に起こり得る重篤な合併症が少ないです。
硝子体手術
現在一般的に行われています。
目の内部から直接手術するやり方です。
- 網膜をひっぱっている硝子体を切除して
- 剥がれていた網膜の内側にある水分を抜いて
- 網膜を土台に張り付けさせ
- 目の中にガスや空気を入れて
- 剥離部分の隙間に水が流れ込まないように塞いで
- レーザーで焼き付けくっつける
硝子体を切除して、剥離内の水分を引いたあとは空気置換、ガス置換とし、上イラストの様になります。
ガス浮力によって穴の周りを圧迫することでさらに剥がれにくくし、最後に先ほどの説明したレーザーでのり付けします。
ガスが入っている間は「水中で目をあけているような」ぼやけた見え方をします。
空気、ガスは種類によりますが、徐々に減っていきますが1週間~数か月程度眼内に残留します。
まとめ
- 網膜剥離は放置すると悪化して失明する病気
- 網膜に穴があいてそこから網膜がどんどん剥がれていく
- 前兆としては、光がチラチラ感じたり、急に飛蚊症が出たり、見えにくい部分がでる
- 治療は手術しかない(レーザー含む)
網膜剥離は眼科でよくある、治療(手術)を急ぐ疾患です。
急に出てきた飛蚊症で、それがどんどん増えたり、見にくい部分が出てきたら、網膜剥離も疑わしいので、急いで眼科を受診するようにしてください。
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