瞳孔ブロック関連をまとめました。
タイトルの用語以外にも、関連する用語をイラストを交えて解説していきます。
正常の生理
瞳孔ブロックは水晶体前面と虹彩後面との間の関係で生じる用語です。
- 正常でも虹彩瞳孔縁と水晶体前面はほとんど接触するように近接している
- その関係で房水が後房→前房へ流出する際に軽い流出抵抗が存在する(瞳孔縁における生理的房水流出抵抗)
瞳孔ブロックと関連用語
なんらかの影響で瞳孔縁における房水流出抵抗が高くなった状態を瞳孔ブロックという
- 完全瞳孔ブロック:瞳孔縁と水晶体が癒着したもの(虹彩後癒着)
- 比較的瞳孔ブロック(※):瞳孔縁と水晶体が癒着していないもの
- 瞳孔遮断:瞳孔縁が水晶体と全周性に癒着したもの
- 瞳孔閉鎖:フィブリンや線維血管膜で瞳孔領が埋まっているもの
- 膨隆虹彩(iris bombe):瞳孔ブロックにより後房圧があがり虹彩が前房側に隆起している状態
※古い文献だと比較的瞳孔ブロックという用語がありますが、現在の相対的瞳孔ブロックに相当すると思います。
単に「瞳孔ブロック」と言うと臨床的には、癒着を表す完全瞳孔ブロックを指して使われているように思います。
相対的瞳孔ブロックは流出抵抗が高く後房→前房へ流れなくなった状態であり、癒着している訳ではないという使われ方です。
膨隆虹彩は臨床的にはっきりと虹彩が盛り上がっているとこの用語を使うと思われますが、病態的には後房圧>前房圧となれば多少なりとも虹彩が隆起し膨隆虹彩になっており、その隆起が影響して隅角を閉塞させると眼圧が急上昇します(急性緑内障発作)
※このイラストぐらい膨隆する場合は基本的には癒着していることが多いです(イラストは大袈裟に描いています)
相対的瞳孔ブロック
相対的≒完全ではない
つまり癒着して完全に房水が通らない状態というわけではないが、流出抵抗が高くなりすぎて結局房水が通らないため後房圧>前房圧という状態で、膨隆虹彩を生じます(完全瞳孔ブロックでももちろん、膨隆虹彩となります)
- 急性緑内障発作の機序
- 散瞳状態から通常瞳孔へ至る過程で起こりやすい
- 散大→通常瞳孔に回復する過程において、虹彩と水晶体の接触はさらに高度となり、房水の通過障害が起こる
- そのため夕方~夜間にかけて多いとされる
逆瞳孔ブロック
- 1992年 Karickhoffによって報告
- 虹彩が後方に偏位し水晶体前面と接着する(虹彩の内反)ことで、虹彩が弁状に働き前房圧>後房圧となる
- 深前房と虹彩の後房側への湾曲、深前房化による遠視化を生じる
- 虹彩裏面の摩擦による色素散布で高眼圧を生じる(→色素散布症候群、色素緑内障)
- 虹彩縁が前房側→後房側への弁のような働きをする
- 瞬目などによる影響で後房から前房へ急激な房水の移動が誘因とされている
- 隅角が閉塞しているわけではない
逆瞳孔ブロックが生じるタイミングとして多いのは、白内障手術時に灌流を前房内に入れ始めたとき。
急激に前房が深くなり虹彩が極大散瞳するときは、逆瞳孔ブロックが起きています。
前房圧が急激に高くなることで
- 虹彩が後方へ押され深前房、極大散瞳
- 虹彩根部が強く伸展されて毛様痛
を生じます。
虹彩の下、前嚢の上にUSチップを入れブロックを解除すれば、極大散瞳していた虹彩が少し縮瞳し、前房の深さももとに戻ります。
まとめ
- 瞳孔ブロックとは瞳孔(虹彩縁)における房水の流出ブロックのこと
- 完全瞳孔ブロックは、瞳孔縁が癒着している
- 相対的瞳孔ブロックは浅前房に伴い水晶体~虹彩間がさらに狭くなり通常より流出抵抗が高くなる状態(癒着はしていない。急性緑内障発作の原理)
- 逆瞳孔ブロックは前房→後房への房水の流れにより前房は深く、虹彩の色素散布による色素緑内障になる
- 逆瞳孔ブロックは白内障手術時の灌流を前房内に入れるときにしばしば生じる
白内障手術時の逆瞳孔ブロック(深前房化、極大散瞳)は比較的高頻度に生じます。
すぐに虹彩下にチップを持っていき、解除する癖をつけましょう。
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