視神経炎 症状・原因・鑑別・MRI・後遺症などについて

視神経炎(optic neuritis)について。今回は典型視神経炎(特発性視神経炎)についての内容です。小児視神経炎、MS/NMO関連、抗AQP4抗体、抗MOG抗体陽性例などに関しては別記事で。

目次

概要・病態

視神経における炎症性疾患で、髄鞘抗原を標的とする自己免疫性障害、脱髄性視神経症と考えられている。障害の部位により前部視神経炎(視神経乳頭炎)と後部視神経炎(球後視神経炎)に分類される。原因不明なものは特発性というが、一般的には特発性視神経炎=典型的な視神経炎である。

  • 好発年齢 15~45歳(平均31.2歳)
  • 男女比  1:3(女性77%)
  • 球後視神経炎vs視神経乳頭炎 約65%:35%

原因

特発性=原因不明 なので、直接的な原因は不明。

病態としては上述のように脱髄性の視神経症である。

症状

  • 亜急性の片眼性の視力低下
  • 眼痛、眼球運動痛(92%)←超重要
  • 中心暗点、中心フリッカー値の低下、色覚異常、コントラスト感度の低下
  • RAPD陽性 

など

通常数日~2週間程度で視機能障害が進行し、その後5週間以内に回復傾向を示す

所見が強く視神経に障害を残す場合、視神経は萎縮し、視機能に後遺症を残す。

所見・診断

前部視神経炎では視神経乳頭の発赤・腫脹を認める。障害が残存した場合はその後、蒼白化・萎縮する。

球後視神経炎では眼底所見の異常所見は認めない(炎症が眼球上にないため)が、炎症による障害が残存した場合は逆行性に視神経が萎縮し、視神経乳頭が蒼白化する。

MRI検査が有用

冠状断脂肪抑制(STIR法:shot T1 invention recovery)や造影T1強調像などが有用。その際に、視神経以外に脳、脊髄に脱髄所見がないことを確認する。(→あればCIS、MS、NMOSDとして神経学的評価が必要)

採血検査で

抗AQP4抗体、抗MOG抗体の有無を採血で確認し、特殊タイプの視神経炎でないことを確認する。(→あればNMOSDとして神経学的評価が必要)

また採血検査では上記以外に特異的なものは明らかでないが、ステロイドパルスを行う可能性を考慮し血算、生化学、感染症の採血を同時に行っておくとよい。

治療・予後

視力低下の程度もさまざまであり、ほぼ保たれている例~光覚程度まで低下する例もある。自然軽快傾向があるため、軽度の視力低下であれば経過観察でもよい。完全に回復する例も多い。一方、視力低下が強い場合などでは、炎症を早急に抑えることにより視力回復を早める目的でステロイドパルス療法を検討する。しかしステロイド内服のみを行うと再発率が高くなるとされる文献がある。

ステロイド治療は視機能回復を早める治療に過ぎず、最終的に行き着く残存視機能はステロイド使用の有無に依らないとされる。(長期視力予後に関与しない)

多発性硬化症(MS)との関連が重要で、視神経炎初発から10年間でのMS移行率は、全体で38%程度とされる。脳病変を認めた場合は発症リスクが上がる。

鑑別

虚血性視神経症

発症年齢が高いこと、眼球運動痛がないこと、MRIで視神経の所見が乏しいことなどから鑑別できる。また基本的には不可逆的で視機能の改善はしない。

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まとめ

視神経炎で大事なことは、眼底所見よりも(球後視神経炎では所見が乏しいため)、発症年齢、性別、眼球運動痛、MRI所見である。同様に急激な視神経障害として発症する虚血性視神経症は、「虚血」なので基本的に高齢で、眼球運動痛はなく、MRIでも所見が乏しい。

  1. 急な片眼性の視力低下で
  2. 比較的若年で女性に多く
  3. 眼球運動痛がほぼ認められ
  4. RAPD陽性など視神経障害所見を認め
  5. MRIにて視神経の高信号所見が認められる

という点が重要である


参考:後眼部アトラス、神経眼科診療クローズアップ、他


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