どっちも急激な視力低下、視野障害を生じ、初診で来るといろんな検査をする必要があります。また、どちらも病気の主座が視神経で同じであるため、似たような所見を来します。
炎症なのか虚血なのか。(典型視神経炎と非動脈炎性虚血性視神経症との鑑別です)
目次
症状
どちらも急性発症の片眼性の視力低下、視野障害を生じる
- 視神経炎
→眼球運動痛が92%に存在 - 虚血性視神経症
→眼痛は生じない
眼球運動時痛は、眼球運動時に総腱輪が牽引され、炎症を起こしている視神経に力が作用するためと考えられている。
好発・リスク因子
- 視神経炎
→若年(平均31歳)の女性(男女比1:3)に多い
基礎疾患は特に関係ない - 虚血性視神経症
→高齢(50歳以上)の男性に多い
高血圧や糖尿病など血管の基礎疾患を持つことが多い
虚血性視神経症は小乳頭であると構造的に動脈虚血が起こり安い(disc at risk)
視神経炎は乳頭炎が35%、球後視神経炎が65%
検査
視力
どちらも低下する(中心視野が障害された場合)
視野
どちらも視野障害を認める
典型的には
- 視神経炎
→中心暗点 - 虚血性視神経症
→下方水平半盲
だが、どちらも視野は様々な形をとるのであくまで参考所見
前眼部所見
どちらも患眼は対光反射が低下、RAPD陽性となる
他の所見は特に認めない
後眼部所見
病変部が視神経のどこか(視神経乳頭部か球後か)によって異なるが、同じ部位が障害されればどちらも同じ所見を来す。
ただし腫脹の色が異なるとされる。
- 視神経乳頭炎
→視神経乳頭腫脹(発赤腫脹)
時間が経つと乳頭は程度が強ければ萎縮、程度が弱ければ元に戻る - 前部虚血性視神経症
→局所性の(上半分、下半分など)の視神経乳頭腫脹(蒼白浮腫)
時間が経つと乳頭は萎縮する - 球後視神経炎であれば乳頭所見なし
- 後部虚血性視神経症であれば乳頭所見なし
CFF(中心フリッカー値)
どちらも低下する
蛍光眼底造影
- 視神経乳頭炎
→視神経乳頭での強い漏出を認める
充盈遅延はない - 前部虚血性視神経症
→初期に乳頭とその周囲の脈絡膜充盈遅延
中期に乳頭の分節状の過蛍光
後期では強い漏出を認める - 球後視神経炎でも主座が乳頭に近ければ乳頭の過蛍光は認める(特に後期)
視神経乳頭部は後毛様動脈、他にて栄養されるため、その閉塞にて前部虚血性視神経症が生じる。
後毛様動脈は視神経乳頭周囲の脈絡膜を栄養するため、そこに充盈遅延が生じる。
MRI
眼窩の脂肪抑制造影MRI冠状断、STIRでの視神経所見を確認すること
- 視神経炎
→炎症部位に造影効果、STIRで高信号を認める - 虚血性視神経症
→所見を認めない
治療
- 視神経炎
→ステロイドパルスを行うことで視機能改善を早める - 虚血性視神経症(非動脈炎性)
→有効な治療はない
予後
- 視神経炎
→炎症の程度によるが自然経過で元の視機能に戻ることも多々ある(視力予後不良例は3%程度) - 虚血性視神経症
→数日~数週間で症状が固定する(後遺症となる)
うっ血乳頭との鑑別
うっ血乳頭との鑑別は簡単で、両眼性で無痛性で視力低下は乏しくマリオット盲点の拡大と頭蓋内圧亢進所見を認める。
- 両眼性の発赤腫脹(非常に強い)
- 視力は正常、進行例では低下する
- マリオット盲点の拡大
まとめ
- 視神経炎
→若年女性
炎症なので痛い、MRIで高信号、回復することが多い - 虚血性視神経症
→高齢男性
虚血なので無痛性、充盈遅延、MRI変化なし、後遺症となる
「炎症なのか、虚血なのか」を考えると年齢・痛みの有無・MRIでの造影効果・蛍光眼底造影での充盈遅延・後遺症の有無など全ての結果がわかりやすいと思います。
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