指定難病 眼科の所見をきたす127疾患まとめ<完全版>

2022/1/1現在、338疾患ある指定難病うち、眼科関連疾患をまとめました。

眼科領域のみの疾患、多臓器にわたる疾患、全身病の一部の表現として目に所見を認める疾患など、眼科領域といっても非常にたくさんの疾患があるため

  1. 難病情報センターで「視覚系疾患」と分類されているもの
  2. 難病情報センターで関係学会に「日本眼科学会」の記載があるもの
  3. その他、眼科所見・症状をきたすもの

で分類したところ

338疾患(2022/1/1)のうち

  1. が9疾患
  2. が24疾患
  3. が94疾患

で、合計127疾患ありました。

「③その他、眼科所見をきたす・きたしうるもの」は、難病情報センターで眼所見の記載があるもの、眼科書籍で疾患の記載があるもの、などで検討しましたが、非常にたくさんあると思うので、適宜ご指摘いただければ幸いです。

患者数は難病情報センターに記載の患者数。

目次

眼科メインの疾患

難病情報センターの「視覚系疾患」のものをまとめました。

90. 網膜色素変性症

症状:両眼性の進行性の夜盲、視野狭窄、視力低下

遺伝:あり。遺伝子変異による疾患

患者数:約30000人(頻度1/4000~1/8000)

国内の失明原因の第2位

134. 中隔視神経形成異常症/ドモルシア症候群

概要:透明中隔欠損と視神経低形成、下垂体機能低下

症状:片側または両側の視力障害、眼振。知能は正常~重度低下までさまざま

遺伝:一部で遺伝性を認めるが、多くは原因不明の孤発例

患者数:約500人

164. 眼皮膚白皮症

症状:青~灰色調の虹彩、視力障害、眼振など

遺伝:常染色体劣性遺伝、メラニン合成に関わる遺伝子変異 

患者数:約5000人

301. 黄斑ジストロフィー

症状:両眼の進行性の視力低下、色覚異常、中心視野異常、羞明など。最終視力は0.1以下が多い。発症時期は幼少期~中高年とさまざま

遺伝:家族性、遺伝性疾患である

患者数:約1000人

302. レーベル遺伝性視神経症

症状:両眼性の亜急性(数週間~数か月)に発症する視力低下、中心暗点、光視症、羞明。最終視力は0.1以下

遺伝:ミトコンドリア遺伝子変異(3460,11778,14484)、母系遺伝。若年男性に好発。母系遺伝のため、罹患男性の子孫には遺伝しない。

患者数:1年間の新規発症者推定数約120人

303. アッシャー症候群

概要:感音難聴に網膜色素変性症を伴う疾患群

症状:網膜色素変性症に同じ

遺伝:常染色体劣性遺伝

患者:約8000人

328. 前眼部形成異常

概要:前眼部の発生異常で、片眼または両眼の先天性の角膜混濁、視力障害、視機能発達障害をきたす

症状:視力低下。視力は0.1以下が30%程度、0.4以下が70%程度

遺伝:遺伝要因が示唆されるが、孤発例が多い

患者数:約6000人

329. 無虹彩症

概要:先天性の虹彩形成異常でさまざまな眼合併症を生じる

症状:両眼性の視力障害、羞明、眼振、斜視、白内障・水晶体脱臼、角膜輪部機能不全、緑内障など

遺伝:常染色体優性遺伝、PAX6遺伝子異常

患者数:約1200人

332. 膠様滴状角膜ジストロフィー

概要:角膜実質へのアミロイド沈着を来すジストロフィー

症状:眼痛、異物感、視力低下

遺伝:常染色体劣性遺伝、TACSTD2遺伝子

患者数:約400人

眼科の所見をきたす疾患(眼科学会の記載があるもの)

難病情報センターの関係学会に「日本眼科学会」の記載があるものをまとめました。

11. 重症筋無力症

<神経・筋疾患>

概要:アセチルコリン受容体(AchR)抗体、筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体

症状:眼瞼下垂、眼球運動障害・複視、筋力低下・易疲労性、構音障害、嚥下障害、呼吸障害

患者数:約23000人

13. 多発性硬化症/視神経脊髄炎

<神経・筋疾患>

MS:視力障害、複視、小脳失調、四肢麻痺、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣など

NMO:より重度の視神経、脊髄障害、抗アクアポリン4(AQP4)抗体

患者数:約17000人

35. 天疱瘡

<皮膚・結合組織疾患>

尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、その他に分類

尋常性:口腔粘膜のほかに、後身、咽頭、喉頭、眼瞼結膜、膣などの重層扁平上皮が障害される

患者数 約6000人

36. 表皮水疱症

<皮膚・結合組織疾患>

概要:四肢末梢や大関節部などの外力を受けやすい部位に、軽微な外力で水疱やびらんを生じ、治癒を繰り返す。

眼症状:眼瞼癒着など

患者数:約350人

38. スティーヴンス・ジョンソン症候群

<皮膚・結合組織疾患>

概要:高熱、全身倦怠感、口唇・口腔・眼・外陰部などの皮膚粘膜移行部、および全身に紅斑びらん水疱が生じ壊死性障害を起こす。

眼所見:偽膜形成、急性角結膜炎、眼表面上皮欠損

患者数:約1500人

40. 高安動脈炎

<免疫系疾患>

概要:大動脈及びその主要分枝や肺動脈、冠動脈に炎症性壁肥厚をきたし、その結果として狭窄、閉塞または拡張病変を来す原因不明の非特異的大型血管炎。橈骨動脈脈拍の消失がよく見られ「脈無し病」と言われる。

眼症状:一過性又は持続性の視力障害、眼前明暗感、失明、眼底変化(低血圧眼底、高血圧眼底)

患者数:約7000人(男女比1:8)

41. 巨細胞性動脈炎

<免疫系疾患>

概要:大型・中型の動脈に巨細胞を伴う肉芽腫を形成する動脈炎で、外頚動脈を高い頻度で傷害し、しばしば側頭動脈を傷害するため、以前は「側頭動脈炎」と呼ばれていた。

症状:側頭部痛、下顎跛行(顎の筋肉を動かすと痛い)、動脈炎性虚血性視神経症、多くは両側性

患者数:約700人

46. 悪性関節リウマチ

<免疫系疾患>

概要:関節リウマチに、血管炎をはじめとする関節外症状(内臓障害)を認めるもの

眼所見:上強膜炎、虹彩炎による視力障害

患者数:約6300人

49. 全身性エリテマトーデス

<免疫系疾患>

概要:免疫複合体の組織沈着により起こる全身性炎症性疾患。診断基準や難病情報センターに眼科所見の記載はない。

眼合併症:涙液分泌障害・角結膜障害、網膜炎、強膜炎・ぶどう膜炎、視神経障害、一過性浅前房・急性近視化など

患者数:約60000人

53. シェーグレン症候群

<免疫系疾患>

概要:唾液腺、涙腺、全身の外分泌腺が系統的に障害される自己免疫性疾患(抗核抗体、リウマトイド因子、抗
SS‐A 抗体、抗 SS‐B 抗体など)

眼症状:眼乾燥、角結膜上皮障害、涙腺腫脹など

患者数:約66000人

56. ベーチェット病

<免疫系疾患>

主症状:口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚症状、眼のぶどう膜炎、外陰部潰瘍

眼症状:両眼性に侵されるぶどう膜炎で、症状は再発性・発作性に生じ、結膜充血、眼痛、視力低下、視野障害などを生じる

遺伝:多因子疾患、HLA-B51抗原と顕著に相関

患者数:約20000人

84. サルコイドーシス

<呼吸器系疾患>

概要:肺門縦隔リンパ節、肺、眼、皮膚の罹患頻度が高いが、神経、筋、心臓、腎臓、骨、消化器など全身のほとんどの臓器で罹患する原因不明の多臓器疾患。

眼症状:霧視、飛蚊症、視力低下

眼所見:
①肉芽腫性前部ぶどう膜炎(豚脂様角膜後面沈着物、虹彩結節)
②隅角結節またはテント状周辺虹彩前癒着
③塊状硝子体混濁(雪玉状、数珠状)
④網膜血管周囲炎(主に静脈)及び血管周囲結節
⑤多発するろう様網脈絡膜滲出斑又は光凝固斑様の網脈絡膜萎縮病巣
⑥視神経乳頭肉芽腫又は脈絡膜肉芽腫

患者数:約27000人

157. スタージ・ウェーバー症候群

<神経・筋疾患>

概要:脳内の軟膜血管腫と、顔面のポートワイン斑、眼の緑内障を有する神経皮膚症候群で、難治性てんかん、精神発達遅滞、運動麻痺などを生じる。精神発達遅滞が約 50~80%に認められる。

眼所見:緑内障。緑内障は漸次進行性であり、時に失明を来す

患者数:約1000人

158. 結節性硬化症

<神経・筋疾患>

概要:てんかんや精神発達遅滞、自閉症などの行動異常と、腎血管筋脂肪腫、リンパ脈管筋腫症、顔面の血管線維腫などの過誤腫を全身に生じる疾患。

眼所見:眼底の過誤腫

遺伝:TSC1(9番染色体)、TSC2(16番染色体)遺伝子異常

患者数:約4000~12000人

160. 先天性魚鱗癬

<皮膚・結合組織疾患>

概要:胎児の時から皮膚の表面の角層が非常に厚くなり、皮膚のバリア機能が障害される疾患。基本的には生命予後は良好。

眼所見:重篤な眼瞼外反、閉瞼不全など

患者数:約200人

162. 類天疱瘡

<皮膚・結合組織疾患>

概要:全身の皮膚及び粘膜に、水疱やびらんを生じる。ヘミデスモゾーム構成蛋白に対する自己免疫反応。水疱性類天疱瘡では BP180 や BP230、粘膜類天疱瘡では BP180 やラミニン 332、後天性表皮水疱症では VII型コラーゲンを標的とする自己抗体を認める。

眼所見:眼粘膜の水疱やびらん

患者数:約7100人

166. 弾性線維性仮性黄色腫

<皮膚・結合組織疾患>

概要:弾性線維に変性・石灰化が生じ組織障害を引き起こす。そのため皮膚、眼、心・血管、消化管に多彩な症候を呈する。

眼所見:網膜に亀裂が入り、オレンジ皮様変化(梨子地眼底)、血管様線条(色素線条)を呈する。同部位に出血・血管新生が発生し、視野欠損、視力障害を生じる。

遺伝:常染色体劣性遺伝、ABCC6 遺伝子( 16 番染色体)異常、遺伝子産物MRP6

患者数:約300人

167. マルファン症候群

<皮膚・結合組織疾患>

概要:大動脈、骨格、眼、肺、皮膚、硬膜などの全身の中胚葉由来の結合組織が脆弱になる遺伝性疾患。大動脈瘤や大動脈解離、高身長、側弯等の骨格変異、水晶体亜脱臼、自然気胸など。

眼所見:両眼性の水晶体亜脱臼(上方~外上方が多い)、小さな水晶体(球状水晶体)。強度近視、眼瞼下垂、網膜剥離、コロボーマ、青色強膜などを生じることもある。

遺伝:常染色体優性遺伝、25%は突然変異

患者数:約15000~20000人

168. エーラス・ダンロス症候群

<皮膚・結合組織疾患>

概要:コラーゲン異常などによる皮膚、関節、血管など全身的な結合組織の脆弱性を来す疾患

眼所見:眼球破裂(強膜脆弱性)、眼間開離、眼瞼裂斜下、青色強膜など

患者数:約20000人

171. ウィルソン病

<代謝系疾患>

概要:胆汁中への銅排泄障害による先天性銅過剰症で、銅の組織沈着により肝機能障害、様々な神経症状、精神症状、腎障害等全身の臓器障害をきたす。早期に診断され適切な治療を受ければ予後は良好だが、治療の中断は致死的。

眼所見:カイザー・フライシャー(Kayser-Fleisher)角膜輪、ひまわり白内障

遺伝:常染色体劣性遺伝、ATP7B遺伝子変異

患者数:約3000人

191. ウェルナー症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:思春期以降に、白髪、白内障などさまざまな老化徴候が出現する早老症候群。死亡の二大原因は動脈硬化性疾患と悪性腫瘍。平均死亡年齢が40歳代半ばと言われてきたが、最近の研究では平均寿命が 10 年以上延長しているよう。

眼所見:若年性(10歳以後)の両眼の白内障

遺伝:常染色体劣性遺伝、第8染色体短腕上 RecQ 型の DNA ヘリカーゼ(WRN ヘリカーゼ)のホモ接合体変異

患者数:約2000人

192. コケイン症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:紫外線性 DNA 損傷の修復システム、特にヌクレオチド除去修復における転写共益修復異常による早老症。日光過敏症、特異な老人様顔貌、皮下脂肪の萎縮、低身長、著明な栄養障害、視力障害、難聴などを生じる。

眼所見:網膜色素変性、視力低下(思春期までに失明)

遺伝:常染色体劣性遺伝

患者数:100人未満

271. 強直性脊椎炎

<骨・関節系疾患>

概要:脊椎・骨盤(仙腸関節)及び四肢の大関節を侵す慢性進行性の炎症性疾患

眼所見:視力低下、失明を招くぶどう膜炎(虹彩炎)が約 1/3 に併発

遺伝:HLA-B27 遺伝子との強い関連性

患者数:約4500人

300. IgG4関連疾患

<免疫系疾患>

概要:免疫異常や血中 IgG4 高値に加え、リンパ球とIgG4 陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化による全身諸臓器の腫大や結節・肥厚性病変などを認める疾患。

眼所見:眼瞼腫脹(涙腺腫脹)

患者数:約8000人

眼科の所見をきたす疾患(その他)

その他、眼所見・症状をきたす疾患については、難病全疾患を確認し(抜けている疾患あるかもしれません)「目・眼」などで検索して該当するものを列挙しました。普通に有名なものもあります。

5. 進行性核上性麻痺

<神経・筋疾患>

概要:中年期以降に発症し、淡蒼球、視床下核、小脳歯状核、赤核、黒質、脳幹被蓋の神経細胞が脱落し、異常リン酸化タウ蛋白が神経細胞内及びグリア細胞内に蓄積する疾患

眼症状:垂直性注視麻痺・垂直性核上性眼球運動障害(初期には眼球運動の随意的上下方向運動が遅くなり、最終的に下方視ができなくなる。)

患者数:約8100人

6. パーキンソン病

<神経・筋疾患>

概要:黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患。4大症状は①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害

眼所見:無動による瞬目の減少

患者数:約11万人

7. 大脳皮質基底核変性症

<神経・筋疾患>

概要:大脳皮質と皮質下神経核(特に、黒質と淡蒼球)の神経細胞が脱落し、神経細胞及びグリア細胞内に異常リン酸化タウが蓄積する疾患

所見:眼球運動障害、ジストニア・開眼困難など

患者数:約3500人

12. 先天性筋無力症候群

<神経・筋疾患>

概要:神経筋接合部分子の先天的な欠損及び機能異常による筋力低下・易疲労性をきたす疾患

所見:眼球運動障害があることがある(ないこともある)

患者数:100人未満

17. 多系統萎縮症

<神経・筋疾患>

概要:30歳以降に発症する神経細胞とオリゴデンドログリアに不溶化したαシヌクレインが蓄積し進行性の細胞変性脱落を来す疾患

眼所見:小脳性眼球運動障害

患者数:約12000人

18. 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)

<神経・筋疾患>

概要:運動失調あるいは痙性対麻痺を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称

眼所見:眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発性運動失調症などの例がある。

患者数:約25000人

19. ライソゾーム病

<代謝系疾患>

概要:ライソゾーム内の酸性分解酵素の遺伝的欠損により、ライソゾーム内に大量の脂質あるいはムコ多糖などを蓄積し、肝臓・脾臓の腫大、骨変形、中枢神経障害などの症状を呈する疾患群であり、現在 60 種の疾患が含まれる。眼所見をを認めるものは①スフィンゴリピドーシス、②ムコ多糖症(MPS)、③ムコリピドーシス(Ⅱ,Ⅲ型のみ指定難病)、④ライソゾーム膜転送異常症にあり、以下のように

GM1ガングリオシドーシス、Tay-Sachs病、Sandohoff病、Gaucher病、Niemann-Pick病、Fabry病、Hurler、Scheie症候群、Hunter症候群、Sanifilippro症候群、Morquio症候群、Maroteaux-Lamy症候群、Sly症候群、シスチン症、セロイドリポフチノーシスなど、多数存在する。

眼所見:角膜混濁、網膜色素変性、cherry-red spot、緑内障、視神経乳頭異常、白内障、核上性眼球運動障害、斜視など

患者数:約900人

21. ミトコンドリア病

<代謝性疾患>

概要:ミトコンドリア機能が障害され、臨床症状が出現する病態の総称(多くはエネルギーの代謝障害)

眼所見:視神経萎縮、外眼筋麻痺、網膜色素変性、急性期は視神経乳頭の発赤・腫脹など

患者数:約1000人

28. 全身性アミロイドーシス

<代謝性疾患>

概要:アミロイドが全身臓器に沈着することによって機能障害を引き起こす一連の疾患群。コンゴレッド染色にて赤橙色に染まる。

眼所見:角膜へのアミロイド沈着

患者数:約1800人

30. 遠位型ミオパチー

<神経・筋疾患>

概要:遠位筋が好んで侵される遺伝性筋疾患の総称

眼所見:眼瞼下垂、眼球運動障害

患者数:約400人

33. シュワルツ・ヤンペル症候群

<神経・筋疾患>

概要:別名、軟骨異栄養性筋強直症。ミオトニア症状と軟骨異常を伴う遺伝性疾患で、生命予後は良いが成長とともに日常生活動作が障害される

眼所見:小眼症、瞼裂狭小(眼輪筋の収縮による)、白内障、斜視、眼振

患者数:100人未満

34. 神経線維腫症

<神経・筋疾患>

概要:NF1はカフェオレ斑と神経線維腫を主徴とし、その他骨、眼、神経系、(副腎、消化管)などに多彩な症候を呈する母斑症。NF2は両側性に発生する聴神経鞘腫(前庭神経鞘腫)を主徴とし、その他の神経系腫瘍(脳及び脊髄神経鞘腫、髄膜腫、脊髄上衣腫)や皮膚病変(皮下や皮内の末梢神経鞘腫、色素斑)、眼病変(若年性白内障や斜視)を呈する。

眼所見:虹彩結節(Lisch結節)、脈絡膜結節(虹彩結節より頻度多いという報告もあり)、視神経膠腫、斜視など

患者数:約3600人

37. 膿疱性乾癬(汎発型)

<皮膚・結合組織疾患>

概要:最も発症頻度の高い尋常性乾癬の他に亜型として、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬がある。

眼所見:結膜炎、虹彩炎、ぶどう膜炎など

患者数:約2000人

39. 中毒性表皮壊死症

<皮膚・結合組織疾患>

概要:高熱や全身倦怠感などの症状を伴って、口唇・口腔、眼、外陰部などを含む全身に紅斑、びらんが広範囲に出現する。SJSの重症型。

眼所見:眼球結膜の充血、偽膜形成、眼表面上皮(角膜上皮、結膜上皮)のびらん(上皮欠損)など

患者数:約200人

43. 結節性多発動脈炎

<免疫系疾患>

概要:中型血管を主体として、血管壁に炎症を生じる疾患

眼所見:充血、浮腫、球結膜下出血、乾性角結膜炎、強膜炎、網膜前出血、網膜出血、血管の口径不同、網膜剥離など

患者数:約9600人

44. 多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)

<免疫系疾患>

概要:①全身の壊死性肉芽腫性血管炎、②上気道と肺を主とする壊死性肉芽腫性炎、③半月体形成腎炎を呈し、その発症機序に抗好中球細胞質抗体(ANCA)が関与する血管炎症候群

眼所見:強膜炎、眼痛、視力低下、眼球突出など

患者数:約2000人

48. 原発性抗リン脂質抗体症候群

<免疫系疾患>

概要:抗カルジオリピン抗体(aCL)、ループス抗凝固因子(LAC)、ワッセルマン反応(STS)偽陽性などの抗リン脂質抗体を持ち、動・静脈の血栓症、血小板減少症、習慣流産・死産・子宮内胎児死亡などを生じる疾患

眼所見:(若年性の)網膜動静脈閉塞症、虚血性視神経症、網膜血管の白線化など

患者数:約10000人

50. 皮膚筋炎/多発性筋炎

<免疫系疾患>

概要:自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下を来し、皮疹を伴うものを皮膚筋炎と呼ぶ

眼所見:両側または片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑(ヘリオトロープ疹)

患者数:約20000人

55. 再発性多発軟骨炎

<免疫系疾患>

概要:全身の軟骨組織特異的に慢性かつ再発性の炎症を来たす疾患

眼所見:結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、ぶどう膜炎

患者数:約500人

60. 再生不良性貧血

<血液系疾患>

概要:骨髄低形成による、末梢血の汎血球減少症

眼所見:眼底出血(貧血網膜症)

患者数:約10000人

61. 自己免疫性溶血性貧血

<血液系疾患>

概要:赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体が産生され、抗原抗体反応により赤血球が傷害を受け、赤血球の寿命が著しく短縮(溶血) し、貧血を来す

眼所見: 眼底出血(貧血網膜症) 、結膜の黄疸

患者数:約2600人

63. 特発性血小板減少性紫斑病

<血液系疾患>

概要:血小板膜蛋白に対する自己抗体が発現し、血小板に結合する結果、主として脾臓における網内系細胞での血小板の破壊が亢進し、血小板減少を来す

眼所見:血小板減少による眼底出血

患者数:約25000人

64. 血栓性血小板減少性紫斑病

<血液系疾患>

概要:ADAMTS13 の基質であるフォンウィルブランド因子による過剰な血小板凝集が引き起こされ、血栓を生じる

眼所見:血小板減少による眼底出血

患者数:年間約500人

77. 下垂体性成長ホルモン分泌亢進症

<内分泌系疾患>

概要:下垂体から分泌される ADH、ACTH、TSH、GH、LH、FSH、PRL の単独ないし複数のホルモン分泌障害あ
るいは分泌亢進により、主として末梢ホルモン欠乏あるいは過剰による多彩な症状を呈する疾患(72~78共通。72下垂体性ADH分泌異常症、73下垂体性TSH分泌亢進症、74下垂体性PRL分泌亢進症、75クッシング病、76下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症、77下垂体性成長ホルモン分泌亢進症、78下垂体前葉機能低下症)

眼所見:下垂体線腫の視神経交叉部圧迫による視野障害(教科書的には両耳側半盲だが、臨床的には綺麗に両耳側半盲とはならないことも多い)

患者数:約17000人

79. 家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)

<代謝系疾患>

概要:LDL 受容体遺伝子変異による単一遺伝子疾患。高 LDL-コレステロール血症、腱黄色腫及び若年性冠動脈硬化症を主徴とする

眼所見:眼瞼黄色腫(特異的ではない)、角膜輪(50歳以上だと老人環と鑑別が難しい。)、高脂血症により網膜静脈閉塞症のハイリスク、重度の高トリグリセリド血症では網膜脂血症など(網膜血管が乳白色を示す)

患者数:約140人(ホモ接合体)

89. リンパ脈管筋腫症

<呼吸器系疾患>

概要:平滑筋様の腫瘍細胞(LAM 細胞)が増殖し、肺に多発性嚢胞を形成する、緩徐進行性かつ全身性の腫瘍性疾患。結節性硬化症(TSC)に伴って発生する TSC-LAM と、単独で発生する孤発性 LAM がある。

眼所見:TSC-LAMの場合、結節性硬化症の眼底所見(網膜過誤腫)など

患者数:約700人

96. クローン病

<消化器系疾患>

概要:口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位に起こりうる、若年者にみられ、潰瘍や線維化を伴う肉芽腫性炎症性病変

眼所見:ぶどう膜炎、虹彩炎

患者数:約36000人

102. ルビンシュタイン・テイビ症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:精神運動発達遅滞、特異顔貌、幅広い拇指趾をもつ多発奇形症候群

眼所見:眼険裂斜下、内眼角贅皮、眼間開離、斜視、屈折異常、鼻涙管閉塞、白内障、緑内障など

患者数:約200人

105. チャージ症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:CHD7 遺伝子のヘテロ変異により発症する多発奇形症候群。成長障害や精神発達遅滞はほぼ必発で、70%程度に先天性心疾患

眼所見:片側ないし両側性の虹彩・網膜・脈絡膜・乳頭のコロボーマ(欠損)はほぼ必発

患者数:約5000人

107. 若年性特発性関節炎

<免疫系疾患>

概要:16歳未満に発症した、自己免疫現象を基盤とした原因不明の6週間以上持続する慢性の関節炎。進行性・破壊性の関節炎を認め、ぶどう膜炎(虹彩炎)、皮疹、肝脾腫、漿膜炎、発熱、リンパ節腫脹などさまざまな関節外症状を伴う。全身症状の強い全身型と、全身症状のない関節型がある。

眼症状:小関節型で多い。ぶどう膜炎は半数が無症状。有症者では視力低下、眼球結膜充血、羞明、霧視など。

患者数:約8000人

108. TNF受容体関連周期性症候群

<免疫系疾患>

概要:発熱、皮疹、筋肉痛、関節痛、漿膜炎などを繰り返し、時にアミロイドーシスを合併する自己炎症性症候群

眼症状:結膜炎・眼窩周囲浮腫

患者数:100人未満

110. ブラウ症候群

<免疫系疾患>

概要:NOD2 遺伝子の変異により常染色体優性遺伝形式にて発症する全身性肉芽腫性疾患

眼症状:ぶどう膜炎。虹彩後癒着、結膜炎、網膜炎、視神経萎縮など病変は全眼球性に及び進行例では、失明する

患者数:100人未満

111. 先天性ミオパチー

<神経・筋疾患>

概要:骨格筋の先天的な構造異常により、新生児期ないし乳児期から筋力、筋緊張低下を示し、また筋症状以外にも呼吸障害、心合併症、関節拘縮、側弯、発育・発達の遅れ等を認める疾患群

眼症状:眼瞼下垂、外眼筋麻痺

患者数:約1000人

113. 筋ジストロフィー

<神経・筋疾患>

概要:骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患。骨格筋障害に伴う運動機能障害を主症状とするが、関節拘縮・変形、呼吸機能障害、心筋障害、嚥下機能障害、消化管症状、骨代謝異常、内分泌代謝異常、眼症状、難聴、中枢神経障害等を合併する。

症状:(眼咽頭筋型)眼瞼下垂・外眼筋麻痺・兎眼、構音障害・嚥下障害、白内障、網膜色素変性症

患者数:約25000人

114. 非ジストロフィー性ミオトニー症候群

<神経・筋疾患>

概要:筋線維の興奮性異常による筋強直(ミオトニー)現象を主徴とし、筋の変性(ジストロフィー変化)を伴わな
い遺伝性疾患

症状:外眼筋・顔面筋・舌筋を含む全身の骨格筋にみられる筋のこわばり(筋強直)が主症状。眼瞼の強収縮後に弛緩遅延がみられる(lid lag)

患者数:約1000人

115. 遺伝性周期性四肢麻痺

<神経・筋疾患>

概要:発作性の骨格筋の脱力・麻痺を来す遺伝性疾患で、血清カリウム値の異常を伴うことが多い

眼所見:眼瞼の強収縮後に弛緩遅延がみられる(lid lag)

患者数:約1000人

117. 脊髄空洞症

<神経・筋疾患>

概要:脊髄内に空洞が形成され、小脳症状、下位脳神経症状、上下肢の筋力低下、温痛覚障害、自律神経障害、側弯症など多彩な神経症状、全身症状を呈する疾患

眼所見:ホルネル(Horner)症候、瞳孔不同、眼振

患者数:約3000人

120. 遺伝性ジストニア

<神経・筋疾患>

概要:ジストニア(持続性の筋収縮により生じる症状)が遺伝性で他の神経変性疾患に属さない生じる疾患群

眼所見:核上性眼球運動異常(側方視眼振、非対称性眼転位、斜視、眼球上転発作)、視神経萎縮、視力低下、視野狭窄、色覚障害など

患者数:約500人

128. ビッカースタッフ脳幹脳炎

<神経・筋疾患>

概要:眼球運動や運動失調、意識障害を三主徴とし、脳幹を病変の首座とする自己免疫疾患

眼所見:両側外眼筋麻痺(左右対称性であることを原則とするが、軽度の左右差はあってもよい。)

患者数:年間約100人

130. 先天性無痛無汗症

<神経・筋疾患>

概要:全身の無痛を主症状とする疾患で、運動麻痺を伴わない。温痛覚障害に自律神経障害を合併する遺伝性疾患群を、遺伝性感覚自律神経ニューロパチーと呼ぶ

眼所見:角膜損傷(角膜潰瘍や点状表層角膜症などから視力低下につながる)

患者数:約300人

132. 先天性核上性球麻痺

<神経・筋疾患>

概要:胎児から新生児期の非進行性脳障害により咽頭喉頭部(球筋)の運動障害を来し、嚥下、摂食、会話、唾液コントールの機能が低下する。経過は脳性麻痺に似るが、上下肢の運動障害はないか、あっても軽度。

眼症状:眼球運動障害

遺伝:家族例が6%程度

患者数:約100人

133. メビウス症候群

<神経・筋疾患>

概要:先天性の顔面神経麻痺と外転神経麻痺をきたす疾患。

症状:両側性
顔面神経麻痺:仮面様顔貌、閉眼障害、流涎、共同水平注視麻痺
外転神経麻痺:デュアン(Duane)眼球後退症候群、内斜視

遺伝:多くは孤発例

患者数:約1000人

135. アイカルディ症候群

<神経・筋疾患>

概要:脳梁欠損、点頭てんかん、網脈絡膜症を三主徴とする先天性奇形症候群

症状:脳梁欠損、点頭てんかん、網脈絡膜症を三主徴。小眼球、網脈絡膜裂孔、視神経乳頭欠損や拡大

患者数:100人未満

139. 先天性大脳白質形成不全症

<神経・筋疾患>

概要:中枢神経系の髄鞘の形成不全により大脳白質が十分に構築されないことによって起こる症候群

眼所見:眼振(出生直後から)、くぼんだ眼球、眼裂狭小

患者数:約200人

145. ウエスト症候群

<神経・筋疾患>

概要:小児期に発症する難治性てんかんを主症状とするてんかん症候群。基礎疾患として脳形成異常や、低酸素性虚血性脳症、外傷後脳損傷、脳腫瘍、代謝異常、染色体異常、先天奇形症候群、遺伝子異常などがある。(144~148疾患まで共通。144レノックス・ガストー症候群、145ウエスト症候群、146大田原症候群、147早期ミオクロニー脳症、148遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん)

眼症状:視力障害、眼振、追視困難、落陽現象(両眼の内下方偏位)など

患者数:約4300人

153. 難治頻回部分発作重責型急性脳炎

<神経・筋疾患>

概要:極めて難治かつ頻回の焦点発作を特徴とする原因不明の疾患

眼所見:顔面を中心とする焦点発作(眼球偏位・顔面間代・無呼吸など)

患者数:約100人

165. 肥厚性皮膚骨膜症

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:ばち指、長管骨を主とする骨膜性骨肥厚、皮膚肥厚性変化を3主徴とする遺伝性疾患

眼所見:眼瞼下垂

患者数:100人未満

175. ウィーバー症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:出生前からの過成長、特徴的な顔貌、骨年齢促進、軽度~中等度の発達の遅れを呈する症候群

眼所見:眼間開離を伴う特徴的な顔貌、眼裂斜下

患者数:100人未満

176. コフィン・ローリー症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:精神発達遅滞、特徴的顔貌、小頭症、先細りの指など骨格系の特徴を有し、音や触覚などの急な刺激で意識消失を伴わない脱力発作を伴う疾患

眼所見:眼瞼斜下、丸い鼻先を含む特徴的な顔貌

患者数:数万人に1人

177. ジュベール症候群関連疾患

<神経・筋疾患>

概要:小脳虫部欠損と筋緊張低下、失調、発達の遅れ、眼球運動異常に、網膜異常、腎嚢胞、肝障害、口腔周囲、指(趾)などの幅広い臨床症状を伴う遺伝性疾患症候群

眼所見:眼瞼下垂、内眼角贅皮、眼球運動失行・眼振・斜視、脈絡膜・網膜欠損、網膜変性、網膜電位(ERG)検査:反応消失または著減

患者数:100人未満

178. モワット・ウィルソン症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:特徴的顔貌、重度から中等度の知的障害と小頭症を3主徴とする先天異常症候群。転写因子である ZEB2遺伝子の片側のアリルの機能喪失型変異で発症

眼所見:特徴的眼周囲所見(眼間開離、内側が濃い眉毛)

患者数:約1000人

179. ウィリアムズ症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:特徴的な妖精様顔貌、精神発達の遅れ、大動脈弁上狭窄及び末梢性肺動脈狭窄を主徴とする心血管病変、乳児期の高カルシウム血症などを有する隣接遺伝子症候群

眼所見:特徴的眼周囲所見(眼間狭小、内眼角贅皮、腫れぼったい眼瞼、星状虹彩、鞍鼻など)

患者数:約2万人に1人

180. ATR-X症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:X 染色体に局在する ATRX 遺伝子を責任遺伝子とする、X 染色体連鎖性精神遅滞症候群の一つ

眼所見:白内障・斜視

患者数:100人未満

181. クルーゾン症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:頭蓋骨・顔面骨縫合早期癒合を来す疾患群で、頭蓋・顔面の形態異常、頸部・気管の異常、四肢の異常を認め、疾患毎に症状が異なる。(181~184疾患まで共通。181クルーゾン症候群、182アペール症候群、183ファイファー症候群、184アントレー・ビクスラー症候群)

眼所見:眼球突出(眼窩形成不全、眼窩の皿状陥凹)とそれに伴う角膜上皮障害など、頭蓋内圧亢進による視神経萎縮、視力低下、斜視など

患者数:合計で約900人

182. アペール症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

クルーゾン症候群参照

183. ファイファー症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

クルーゾン症候群参照

186. ロスムンド・トムソン症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:小柄な体型、日光過敏性紅斑、多形皮膚萎縮症、骨格異常、若年性白内障を特徴とする常染色体劣性の遺伝病

眼所見:両側性の若年性白内障

患者数:100人未満

187. 歌舞伎症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:患者の切れ長の目をもつ顔貌が歌舞伎役者の隈取に似ることから命名された先天異常、ほとんどが孤発例

眼所見:下眼瞼外側 1/3 の外反・切れ長の眼瞼裂(ほぼ 100%)、外側 1/2 が疎な弓状の眉

患者数:約4000人

194. ソトス症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:NSD1 遺伝子の機能異常による大頭、過成長、骨年齢促進、発達の遅れ、痙攣、心疾患、尿路異常、側彎などを呈する先天異常症候群

眼所見:眼瞼裂斜下、眼間開離を含む特徴的な外見

患者数:約2500人

195. ヌーナン症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:細胞内の Ras/MAPK シグナル伝達系にかかわる遺伝子の先天的な異常によって、特徴的な顔貌、先天性心疾患、心筋症、低身長、胸郭異常、停留精巣、知的障害などを示す常染色体優性遺伝性疾患

眼所見:眼間開離・眼瞼裂斜下・眼瞼下垂等を含む特徴的な顔貌

患者数:約600人

196. ヤング・シンプソン症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:①特徴的な顔貌、②精神発達の遅れ:中等度から重度、③眼症状:眼瞼裂狭小を必須として付随する弱視・鼻涙管閉塞など、④骨格異常:内反足など、⑤内分泌学的異常:甲状腺機能低下症、⑥外性器異常、などを特徴とする先天異常症候群

眼所見:眼瞼裂狭小を必須として付随する弱視・鼻涙管閉塞など

患者数:約100人

197. 1p36欠失症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:1番染色体短腕末端 1p36 領域の欠失によっておこる染色体異常症候群で、成長障害、重度精神発達遅滞、難治性てんかんなどをきたす

眼所見:まっすぐな眉毛、落ち窪んだ眼、眼間狭小

患者数:約100人

199. 5p欠失症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:5番染色体短腕の部分欠失に基づく染色体異常症候群で、小頭症、小顎症、発達の遅れ、筋緊張低下を主徴とする

眼所見:眼間開離、内眼角贅皮

患者数:約1000人以下

200. 第14番選書幾体父親性ダイソミー症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:14 番染色体長腕の 32.2 領域(14q32.2)に存在するインプリンティング遺伝子の発現異常により生じ、羊水過多、小胸郭による呼吸障害、腹壁異常、特徴的な顔貌をしめす

眼所見:眼瞼裂狭小

患者数:100人未満

204. エマヌエル症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:特異顔貌、口蓋裂、小顎症、先天性心疾患、精神運動発達遅滞を呈する先天性奇形症候群で、11/22 混合トリソミーが原因である

眼所見:眼裂斜上

患者数:100人未満

218. アルポート症候群

<腎・泌尿器系疾患>

概要:糸球体基底膜を構成する IV型コラーゲンの遺伝子変異による進行性遺伝性腎炎、10 代後半から 20 代前半に末期腎不全となる。

眼所見:前円錐水晶体、後嚢下白内障)、後部多形性角膜変性症、斑点網膜などによる視力低下

遺伝:約9割がX連鎖型遺伝形式、常染色体劣性遺伝もあり。

患者数:約1200人

219. ギャロウェイ・モワト症候群

<腎・泌尿器系疾患>

概要:腎糸球体硬化症(ネフローゼ)、小頭症(てんかん、精神運動遅滞)を2主徴とし、顔面・四肢奇形を合併する症候群

眼所見:眼間開離

患者数:約200人

222. 一次性ネフローゼ症候群

<腎・泌尿器系疾患>

概要:大量の糸球体性蛋白尿を来し、低アルブミン血症や浮腫が出現する腎疾患群。成人ネフローゼ症候群の診断基準は、尿蛋白3.5g/日以上(随時尿において尿蛋白/尿クレアチニン比が 3.5g/gCr 以上)が継続し、血清アルブミン値が 3.0g/dL 以下

眼所見:ネフローゼによる急激な水分貯留によって眼瞼浮腫・腫脹、脈絡膜厚増加、毛様体浮腫に伴う水晶体前方移動による近視化などを生じることがある

患者数:約16000人

227. オスラー病

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:①鼻出血、②舌・口腔粘膜・指・鼻の末梢血管拡張、③内臓病変(胃腸末梢血管拡張、肺、肝、脳、脊髄動静脈奇形)、④家族歴を特徴とする、遺伝性遺伝性出血性末梢血管拡張症

所見:末梢血管拡張による鼻腔、眼瞼、口唇、口腔、手指などに出現する拡張性小血管病変(圧迫により退色)

患者数:約10000人

233. ウォルフラム症候群

<内分泌系疾患>

概要:若年発症の糖尿病が初発症状となり、次いで視神経萎縮により視力障害を来す常染色体劣性遺伝性疾患

眼所見:(糖尿病網膜症に依らない)視神経萎縮による視力障害が発症し、失明に至りうる

患者数:約200人

234. ペルオキシソーム病

<代謝系疾患>

概要:細胞内ペルオキシソームに局在する酵素・タンパクの単独欠損症と、それらのタンパクをペルオキシソームに局在させるために必要な PEX タンパクの遺伝子異常症

眼所見:内眼角贅皮・眼間開離、白内障や緑内障、角膜混濁、網膜色素変性、眼振、視野狭窄

患者数:100人未満

248. グルコーストランスポーター1欠損症

<代謝系疾患>

概要:脳のエネルギー代謝基質であるグルコースが中枢神経系に取り込まれないことにより生じる代謝性脳症

眼所見:オプソクローヌスに疑似した異常眼球運動発作

患者数:100人未満

259. レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症

<代謝系疾患>

概要:コレステロールのエステル化に重要な酵素 LCAT の酵素欠損や活性低下により、遊離コレステロールやレシチン(フォスファチジルコリン)が増加し、その結果 HDL コレステロールの著明な低下及び血清コレステロールエステル比の低下を生じリポタンパクが組織に沈着することで角膜混濁、溶血性貧血、腎障害などを起こす

眼所見:全例にびまん性の角膜混濁

患者数:100人未満

262. 原発性高カイロミクロン血症

<代謝系疾患>

概要:カイロミクロン代謝に必要な酵素の欠損や、輸送蛋白の欠損などにより、血中に異常にカイロミクロンが
蓄積し、黄色腫(発疹性黄色腫)や、時に急性膵炎を発症させる疾患

眼所見:網膜脂血症(血清トリグリセリド値が 4,000mg/dL 以上)

患者数:約300人

264. 無βリポタンパク血症

<代謝系疾患>

概要:著しい低コレステロール血症及び低トリグリセリド血症を来す常染色体劣性遺伝疾患

眼所見:網膜色素変性症(夜盲、視野狭窄、視力低下)

患者数:100人未満(国内では数家系のみ)

265. 脂肪萎縮症

<代謝系疾患>

概要:全身性あるいは部分性に脂肪組織が消失する疾患で、重度のインスリン抵抗性糖尿病や高中性脂肪血症、非アルコール性脂肪肝炎など様々な代謝異常を発症する

眼所見:インスリン抵抗性に伴う糖尿病から糖尿病網膜症を発症

患者数:約100人

274. 骨形成不全症

<骨・関節系疾患>

概要:全身の骨脆弱性による易骨折性や進行性の骨変形と、様々な程度の結合組織症状を示す先天性疾患。90%以上の症例では、結合組織の主要な成分である I 型コラーゲンの遺伝子変異を認める。

眼所見:青色強膜

患者数:約6000人

275. タナトフォリック骨異形成症

<代謝系疾患>

概要:長管骨(特に上腕骨と大腿骨)の著明な短縮と重度な呼吸障害を認める、線維芽細胞増殖因子受容体3遺伝子の点突然変異が原因で生じる致死性疾患

眼所見:眼球突出

患者数:100人未満

278. 巨大リンパ管奇形(頸部顔面病変)

<呼吸器系疾患>

概要:顔面・口腔・咽喉頭・頚部に先天性に発症する巨大腫瘤性のリンパ管形成異常であり、全身どこにでも発生しうるが、特に頭頚部や縦隔、腋窩、腹腔・後腹膜内、四肢に好発する

眼所見:眼窩・眼瞼病変では開瞼・閉瞼不全、眼球突出・眼位異常、視力低下を呈し、眼窩内出血・感染などにより失明に至る

患者数:約600人

280. 巨大動静脈奇形(頚部顔面又は四肢病変)

<循環器系疾患>

概要:顔面・口腔・咽喉頭・頚部又は四肢のうち一肢の広範囲に発症する巨大腫瘤性の動静脈形成異常

眼所見:眼窩・眼瞼病変では開瞼・閉瞼不全、眼球突出・眼位異常、視力低下を呈し、眼窩内出血・感染などにより失明に至る

患者数:約700人

284. ダイヤモンド・ブラックファン貧血

<血液系疾患>

概要:赤血球造血のみが障害される先天性の造血不全症で大球性正色素性貧血をしめす。約 50%は種々の奇形や低身長を合併

眼所見:眼間開大、内眼角疣贅、眼瞼下垂

患者数:約200人

285. ファンコニ貧血

<血液系疾患>

概要:染色体の脆弱性を背景に、①進行性汎血球減少、②骨髄異形成症候群や白血病への移行、③身体奇形、④固形がんの合併を来すことのある血液疾患

眼所見:小眼球、斜視、乱視、白内障

患者数:約200人

297. アラジール症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:小葉間胆管減少症による慢性肝内胆汁うっ滞を示す遺伝性疾患。肝外症状を伴う。「肝臓、顔貌、心血管、眼球、椎体の全てに異常が見られる場合を完全型アラジール症候群、肝臓を含めて上記の3症状を伴う場合を不完全型アラジール症候群」

眼所見:後部胎生環

遺伝:常染色体優性遺伝、JAC1遺伝子異常、Notch2遺伝子異常

患者数:約200~300人

310. 先天異常症候群

<染色体・遺伝子変化に伴う症候群>

概要:先天的に複数の器官系統に先天異常がある疾患の総称で、単一部位に先天異常がある疾患と区別される

眼所見:内眼角贅皮、眼瞼下垂、眼裂斜上

遺伝:常染色体優性遺伝、JAC1遺伝子異常、Notch2遺伝子異常

患者数:約4000人

315. ネイルパテラ症候群(爪膝蓋骨症候群)

<腎・泌尿器系疾患>

概要:爪形成不全、膝蓋骨の低形成あるいは無形成、腸骨の角状突起、肘関節の異形成を4主徴とする遺伝性疾患

眼所見:緑内障・眼圧亢進が一般集団より高頻度に、より若年でみられる

患者数:約500人

319. セピアプテリン還元酵素欠損症

<代謝系疾患>

概要:芳香族アミノ酸水酸化酵素の補酵素テトラヒドロビオプテリン(BH4)の生合成に関わる SR をコードする遺伝子の異常で、運動発達遅滞と言語発達遅滞を含む認知機能発達遅滞、日内変動を伴う運動障害や早期からの眼球回転発作を示し、初期に低緊張を伴うジストニア、パーキンソン様の振戦が認められる

眼所見:眼球回転発作

患者数:100人未満(約1人)

320. 先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症

<神経・筋疾患>

概要: 150 種以上の GPI アンカー型蛋白質が細胞表面に発現できないので、GPI生合成遺伝子の完全欠損は胎生致死となる。必須症状は、精神・運動発達の遅れで、多くはてんかんを伴う

眼所見:両眼解離、幅の広い鼻梁、長い眼裂

患者数:100人未満

323. 芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素欠損症

<代謝系疾患>

概要: L-ドーパをドパミンに、5−ヒドロキシトリプトファンをセロトニンに脱炭酸化する酵素であり、神経伝達物質であるドパミン、ノルエピネフリン、セロトニンの合成に必須の酵素であるAADCの欠損症で、乳児期早期からの発達遅滞及び間歇的な眼球回転発作など眼球運動異常と四肢ジストニアなどで発症する

眼所見:間歇的な眼球回転発作、眼球輻輳痙攣、眼瞼下垂

患者数:100人未満(約10例)

324. メチルグルタコン酸尿症

<代謝系疾患>

概要: 尿中にメチルグルタコン酸の排泄を来す疾患の総称でⅠ~Ⅲ型に分類

眼所見:<Ⅲ型>両側視神経萎縮(乳児期から)、眼振、斜視

患者数:100人未満

325. 遺伝性自己炎症疾患

<免疫系疾患>

概要: 自然免疫系に関わる遺伝子異常を原因とし、生涯にわたり持続する炎症を特徴とする疾患群

眼所見:中心静脈閉塞、視神経萎縮、動眼神経麻痺、虹彩毛様体炎、網膜ぶどう膜炎

患者数:100人未満

333. ハッチンソン・ギルフォード症候群

<免疫系疾患>

概要:遺伝性早老症の中で最も症状が重篤な疾患で、生後半年から2年で水頭症様顔貌、禿頭、脱毛、小顎及び強皮症を呈するが、精神運動機能や知能は正常。脳梗塞、冠動脈疾患、心臓弁膜症、高血圧、耐糖能障害及び性腺機能障害を合併し平均寿命は 14.6 歳

眼所見:眼球突出

患者数:100人未満

335. ネフロン癆

<腎・泌尿器系疾患>

概要:一次繊毛に存在する蛋白をコードする NPHP 遺伝子の異常が主たる原因とされている、常染色体劣性遺伝性疾患

眼所見:網膜色素変性症、眼球運動失調

患者数:約200人

336. 家族性低βリポタンパク血症 1(ホモ接合体)

<代謝系疾患>

概要:ヘテロ接合体は比較的高頻度だが、ホモ接合体は稀。無β リポタンパク血症と同様に脂肪吸収障害とそれによる脂溶性ビタミン欠乏症、著しい低コレステロール血症、末梢血に有棘赤血球を認める

眼所見:網膜色素変性症、夜盲、色覚異常、視野狭窄、視力低下

患者数:100万人あたり1人以下(国内では数家系のみ)

337. ホモシスチン尿症

<代謝系疾患>

概要:先天性アミノ酸代謝異常症であり、メチオニンの代謝産物であるホモシステインが血中に蓄積することにより発症する。新生児マススクリーニングの対象疾患である。

眼所見:両眼性対称性の水晶体脱臼(下方偏位が多い。10 歳までに 80%以上に生じる)、緑内障、白内障、強度近視、青色強膜など

患者数:約400人未満


参考
・難病情報センター ホームページ など

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