高血圧性眼底の評価基準と意義

高血圧性眼底の分類、所見まとめと

網膜血管を観察することの意義について説明します。

目次

Keith-Wagener慶大変法分類

KW分類(変法ではない)ではⅡ群はa,b分かれないようです。

分類眼底所見眼底病名
0群所見なし正常眼底
Ⅰ群網膜動脈の軽度の狭窄または硬化高血圧性眼底
Ⅱa群動脈硬化が明らかとなり狭窄も高度高血圧性眼底
Ⅱb群Ⅰa群所見+動脈硬化性網膜症や網膜静脈閉塞高血圧性眼底
Ⅲ群著明な硬化性変化+血管攣縮性網膜症、網膜浮腫、綿花状白斑、出血高血圧性網膜症
Ⅳ群Ⅲ群所見+視神経乳頭浮腫高血圧性網膜症

ⅡbとⅢは、網膜静脈閉塞(RVO)とすると所見がどちらにも該当するのですが、所見がよりはっきりする場合はⅢ群ということでよいと思います。

Scheie分類

SとHで記載します。(”S0H0”、”S1H2”など)

分類動脈硬化性変化(S)高血圧性変化(H)
0度正常正常
1度動脈血柱反射の軽度増強、軽度の動静脈交叉現象細動脈の軽度のびまん性狭窄
2度動脈血柱反射の高度増強、中等度の動静脈交叉現象口径不同
3度銅線動脈網膜出血、白斑
4度銀線動脈乳頭浮腫
  • 正常な動静脈は、網膜静脈径:網膜動脈径=4:3
  • 「口径不同」は動脈の太さが一様でないことを意味する(≒部分的な狭窄を認める)
  • 「交叉現象」は動静脈の交叉部での静脈が圧迫されることによる狭小化・途絶を見る
  • 「血柱反射」は動脈の血流が流れている部分(赤色)と血管自体の反射の割合を見る

高血圧性網膜症の評価の意義

血管は全身に張り巡らされており、体表面には見えていても皮膚が被さっているので、”そのまま”見えている訳ではありません。

その点、眼底の網膜血管は、直接観察できる唯一の血管となります。

その血管の動脈硬化具合、高血圧性変化を観察することによって

「全身の血管の状態を間接的に把握できる」という点が、眼底網膜血管の診察の意義です。

網膜分枝静脈閉塞症を起こす程度の硬化性変化、高血圧性変化を認めると、脳卒中、認知機能低下、循環器疾患での死亡危険度が2倍以上あがるとされています。

乳頭浮腫まで認めると生命予後が不良となり緊急で降圧治療が勧められます。

視機能に悪影響が出ていない限り、基本的には眼科での治療はなく、内科的治療を開始し眼底所見が改善するかを確認します。

網膜血管を確認することで全身の血管の動脈硬化を間接的に把握できる

まとめ

  • 眼底血管は直接診察ができる唯一の血管
  • 間接的に全身の血管の動脈硬化、高血圧性変化を把握できる
  • 健診などで使われる分類は主にKW分類かScheie分類
  • 出血や白斑がでるとそれなりに重症

出血や白斑があれば重症ということは簡単にわかりますが

それ以外の場合は主に

  • 動脈の口径不同
  • 交叉現象
  • 血柱反射

の程度をみて、細かい分類をしますが

所見が”軽度”か”高度”かは主観的な部分もややあり、個人的にはそこまで細かくは気にしなくてよいと思います。

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