緑内障点眼・治療薬まとめ<作用機序、用量用法、副作用>

緑内障点眼の種類、作用機序、用量用法、副作用など、全身投与薬も含めて全てまとめました。

目次

緑内障点眼の種類

下記の分類は個人的見解です。

メジャー群

  • プロスタグラン(PG)
  • β遮断薬
  • 炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)
  • α2刺激薬
  • ROCK阻害薬(Rhoキナーゼ阻害薬)

マイナー群

  • α1遮断薬
  • α1β遮断薬
  • イオンチャネル開口薬
  • 副交感神経刺激薬
  • 交感神経刺激薬

全身投与群

  • ダイアモックス(炭酸脱水酵素阻害薬)
  • マンニトール(浸透圧利尿薬)

眼圧下降の作用機序

薬剤による眼圧下降機序は、全身投与例を含め下記4つになります。

個人的見解のメジャー群を太字にしています。

房水産生抑制

房水自体の産生を抑制して眼圧下降を図る薬剤

  • β遮断薬
  • 炭酸脱水酵素阻害薬
  • α2刺激薬

線維柱帯路流出促進(主経路)

メインの房水流出路からの流出量を増やして眼圧下降を図る薬剤

  • ROCK阻害薬
  • イオンチャネル開口薬
  • 副交感神経刺激薬
  • 交感神経刺激薬

ぶどう膜強膜路流出促進(副経路)

サブの房水流出路(1割程度)からの流出量を増やして眼圧下降を図る薬剤

  • プロスタグランジン
  • α2刺激薬
  • α1遮断薬
  • αβ遮断薬

現在緑内障の眼圧下降薬の第一選択薬はプロスタグランジン製剤であり、一番眼圧が下降するのは副経路に働く薬剤となる。

浸透圧利尿薬

浸透圧差を利用し眼球内水分(硝子体液成分)を眼外(血管内)に引き込み眼圧下降を図る薬剤

  • マンニトール
  • グリセオール

など

各種薬剤詳細

プロスタグランジン製剤

眼圧下降効果が一番大きい第一選択薬。副経路からの房水流出を促進し眼圧を下げる。

1日1回点眼

効果・副作用:眼圧下降、結膜充血、血管透過性亢進、炎症(ぶどう膜炎、虹彩炎、嚢胞様黄斑浮腫)、虹彩色素変化、充血、睫毛伸長、多毛、眼瞼色素沈着、上眼瞼溝深化(DUES)

キサラタン®(ラタノプロスト

  • 0.005%
  • 1日1回
  • FP受容体
  • BAC

トラバタンズ®トラボプロスト

  • 0.004%
  • 1日1回
  • FP受容体
  • イオン緩衝系防腐剤

タプロス®タフルプロスト

  • 0.0015%
  • 1日1回
  • FP受容体
  • BAC
  • 防腐剤フリーの1回使い切りのミニタイプあり

ルミガン®ビマトプロスト

  • 0.03%
  • 1日1回
  • FP受容体+FPスプライスバリアント
  • BAC

エイベリス®(オミデネバグ

  • 0.002%
  • EP2受容体
  • 防腐剤
  • 禁忌:無水晶体眼、偽水晶体眼(IOL眼)←嚢胞様黄斑浮腫が高頻度に出現するため

交感神経β遮断薬

房水産生を抑制して眼圧を下げる。

1日2回点眼が基本だが長期持続効果のあるタイプ(1日1回)もある。

夜間は副交感神経優位になるため、点眼効果が弱いとされる。

禁忌:気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、心不全、洞性徐脈、Ⅱ・Ⅲ度房室ブロック、心原性ショック

チモプトール®チモロール

  • 0.25%と0.5%
  • 1日2回/1日1回のXE
  • β1、β2
  • 他、リズモン®

ミケラン®カルテオロール

  • 1%と2%
  • 1日2回/1日1回のLA
  • β1、β2
  • BACフリー

ベトプティックエス®ベタキソロール

  • 0.5%
  • 1日2回
  • β1

ミロル®レボブノロール

  • 0.5%
  • 1日2回
  • α1、β1、β2

ハイパジール®ニプラジロール

  • 0.5%
  • 1日2回
  • α1、β1、β2

炭酸脱水酵素阻害薬

房水産生を抑制し眼圧を下げる。

1日2-3回点眼

トルソプト®ドルゾラミド

  • 0.5%と1%
  • 1日3回
  • しみる

エイゾプト®ブリンゾラミド

  • 1%
  • 1日2~3回
  • 懸濁液

ダイアモックス®アセトゾラミド)(全身投与薬)

内服薬(ダイアモックス250mg)と注射薬(ダイアモックス注射用500mg)がある。

利尿作用もある。

  • 1日250-1000mgを分割経口投与(1-4錠)・静脈内注射・筋肉注射する
  • 高度の肝障害、肝硬変、無尿、腎不全、高度な腎障害には禁忌
  • 副作用:四肢知覚異常(しびれ)、多尿・頻尿、電解質異常、消化器症状

高齢者に大量使用は極力させないように

α2刺激薬

房水産生を抑制し眼圧を下げる。

アイファガン®ブリモニジン

  • 0.1%
  • 1日2回
  • アレルギー頻度が高い
  • 禁忌:2歳未満の幼児

アイオピジン®(アプラクロニジン)

  • 1%
  • レーザー照射1時間前、照射後に1滴ずつ
  • レーザー手術後の一過性眼圧上昇防止目的にのみ使う

※レーザー線維柱帯形成術、レーザー虹彩切開術、レーザー後嚢切除術

ROCK阻害薬(Rhoキナーゼ)

主経路(線維柱帯)からの流出を増やし眼圧を下降させる。

グラナテック®(リパスジル)

  • 0.4%
  • 1日2回
  • アレルギー頻度が高い

高浸透圧利尿薬(全身投与薬)

D-マンニトールのみの製剤、D-マンニトールとD-ソルビトールが含まれた製剤(マンニトールS)、グリセオールがある。

マンニトール(D-マンニトール)

  • 20%溶液300ml(D-マンニトール60g)と15%溶液500ml(D-マンニトール75g)がある
  • 浸透圧比3(対生理食塩水)
  • D-マンニトールとして体重1kgあたり1-3gを、15~20%溶液として静脈注射する
  • 1日量はD-マンニトールとして200gまで
  • 投与速度は100ml /3-10分(=10-33.3ml /分)
    100mlあたり10分以上かけて投与すること(300mlで30分以上、500mlで50分以上)

マンニトールS(D-マンニトール+D-ソルビトール)

  • 300ml中、D-マンニトール45g(15%溶液)、D-ソルビトール15g(5%溶液)含まれている
  • 浸透圧比5(対生理食塩水)
  • 体重1kgあたり7-20ml(D-マンニトールとして約1-3g)を静脈注射する
  • 1日量はD-マンニトールとして200gまで
    →100mlあたり10分以上かけて投与すること(全量投与は30分以上かけて)

※浸透圧比がこちらのほうが高いが、添付文書上、有効性に差はない模様

配合剤一覧

2種類の効能の配合剤がある。

1日1回点眼と2回点眼がある。

副作用はそれぞれの含まれている薬剤のものと同じ。

PG+β遮断薬(ザラカム、デュオトラバ、タプコム、ミケルナ)と、α2刺激+CAI(アイラミド)の2種の点眼だけで4つ分の効能がある。

→点眼数が多くなると点眼に関わる患者負担が大きくなるため、配合剤にできる場合はなるべく配合剤を使うほうがよい。

PG+β遮断

ザラカム®・ラタチモ®(ラタノプロスト+チモロール)

キサラタン+0.5%チモプトール

  • 1日1回
  • 遮光、冷蔵

デュオトラバ®(トラボプロスト+チモロール)

トラバタンズ+0.5%チモプトール

  • 1日1回
  • 遮光、常温
  • BACなし
  • 他、トラチモ®

タプコム®(タフルプロスト+チモロール)

タプロス+0.5%チモプトール

  • 1日1回
  • 遮光、室温

ミケルナ®(ラタノプロスト+カルテオロール)

キサラタン+ミケラン

  • 1日1回
  • BACなし

CAI+β遮断

アゾルガ®(ブリンゾラミド+チモロール)

エイゾプト+0.5チモプトール

  • 1日2回
  • 遮光、室温

コソプト®(ドルゾラミド+チモロール)

1%トルソプト+0.5%チモプトール

  • 1日2回
  • 遮光、室温
  • 防腐剤フリーのミニタイプあり

α2刺激+CAI

アイラミド®(ブリモニジン+ブリンゾラミド)

  • 1日2回
  • 粘稠度が高く他の点眼薬より早くなくなる
  • アイファガンによるアレルギーがでやすい

α2刺激+β遮断

アイベータ®(ブリモニジン+チモロール)

  • 1日2回

具体的な使用方法

  1. 同薬効成分が重複しないように使用する
  2. 同薬効でも効く効かないがあるため、効果が乏しい場合は同薬効の他の薬剤を試してみる
  3. 点眼使用本数が多くなり過ぎないように、配合剤の使用を考慮する
  4. 点眼後1-2時間以上たっても充血や眼瞼炎がある場合は薬剤アレルギーを考慮する

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