網膜電図(electroretinography:ERG)についてです。
一般外来では扱う頻度がそこまで多くないため、なかなか身に付きにくい分野です。
今回は網膜全体を測定する全視野ERGに関してです。
検査目的
- 網膜機能の評価
網膜機能評価のために行う検査です。
OCTは網膜の形状、ERGは網膜の機能です。
測定限界
- 神経節細胞より末梢の反応(中枢の反応は含まれない)
- 網膜全体の反応を反映する(一部に障害があるだけでは正常波形となる)
通常のERGでは網膜全体の機能を反映しており、部分的な機能障害では異常所見ははっきりとは現れません。
検査対象
ERGを使うケースは主に以下のパターンです。
- 眼底が見えない場合の網膜機能評価
- 夜盲疾患、昼盲疾患の診断と鑑別
- 乳幼児の網膜機能評価
- 原因不明の視力障害、視野障害
眼底が見えない状態としては、角膜混濁、白内障、硝子体出血・混濁などがあります。
診断には網膜色素変性が有名ですが、その他、小口病、白点状眼底、先天停止夜盲、錐体ジストロフィ、杆体1型色覚(全色盲)など様々な網膜疾患の鑑別に有用です。
b派、律動様小波は網膜血行不全に敏感に反応するとされ、糖尿病網膜症、網膜中心動脈閉塞症、眼虚血症候群なども検査所見は得られます。行わずとも診断できるので通常は行わないです。
検査の流れ
- 暗順応(約20分)
- 杆体応答→フラッシュ最大応答
- 明順応(約10分)
- 錐体応答→30Hzフリッカー応答
の順に測定します。フラッシュ最大応答のみでよい場合は暗順応させてそのまま測定します。
すべて行うと時間がかかるため、フラッシュ最大応答のみで良い場合はそのようにしてもよいと思います。
検査結果の読み方
フラッシュ最大応答
一番大事な所見です。錐体と杆体の混合反応です。
- a波・・・最初に見られる陰性派
- b派・・・a波についで見られる陽性派、a波よりも振幅が大きい
- 律動様小波(OP波)、通常4つの小波として認める
OP: oscillatory potential
波形の由来
- a波・・・視細胞(過分極)
- b派・・・双極細胞(脱分極)、Müller細胞
- 律動様小波・・・アマクリン細胞を含む内顆粒層の細胞
杆体応答
暗順応後最初に測ります。(その次にフラッシュ最大応答)
杆体機能が低下していると、減弱・消失します。
錐体応答
明順応してから測定します。
錐体機能が低下している場合、減弱・消失します。
30Hzフリッカー応答
錐体応答後に測定します。
フリッカーなので連続波形となります。
錐体機能が低下している場合、減弱・消失します。
異常波形と鑑別診断
以下、フラッシュ最大応答波形の異常に関してです。
律動様小波(OP)のみ減弱
OPが消失しツルツルのタイプ
糖尿病網膜症(初期より)、ベーチェット病の初期、網膜血行不全、高安病など
a波、b派、OPすべて減弱:subnormal ERG(減弱型・準正常型)
全体的に振幅が減弱しているタイプ
網膜剥離、ぶどう膜炎、ベーチェット病の初期など
a波の振幅が正常でb派の振幅がa波より小さい:negative ERG(陰性型)
振幅は本来a波<b派ですが、陰性型はa波>b派のタイプ
先天停在性夜盲、X連鎖性網膜分離症、小口病、白点状眼底、網膜中心動脈閉塞症など
すべての成分が消失:non-recordable ERG(消失型・平坦型)
反応がなくフラットの状態のERG
網膜色素変性、白点状網膜症、網膜全剥離、眼動脈閉塞、眼球癆、コロイデレミアなど
まとめ
- 網膜の機能を測る検査(形態はOCT)
- 中間透光体混濁の網膜機能評価、原因不明の視力低下、網膜疾患の診断などに用いる
- フラッシュ最大応答(錐体杆体混合応答)が重要
- a波、b派、律動様小波がある
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