角膜の発生と解剖、機能について。
目次
角膜の発生
- 角膜上皮は表層外胚葉由来
- 角膜実質、内皮は神経堤由来
- 胎生5週、水晶体胞が分離し角膜上皮へ分化する
- 水晶体と角膜上皮の間にコラーゲンが形成される(一次実質)
- 胎生19週頃、一次実質はBowman層となる
角膜の解剖
- 横径11-12mm
- 厚みは中央で約520µm
- 全角膜屈折率は約+42D(前面+48D、後面-6D)(眼球全体+60Dの約2/3を占める)
- 曲率半径は前面約7.7mm、後面約6.6mm(前面の方がなだらか)
- 屈折率は約1.33
- 外側から順番に、上皮、Bowman層、実質、Descemet膜、内皮の5層から成る
角膜上皮
- 中央で5-6層、周辺部で8-10層から成る、非角化の重層扁平上皮
- 厚みは中央で約50µm(角膜全体の1/10)
- 表層から表層細胞、翼細胞、基底細胞と呼ばれ、基底細胞とBowman層の間に基底膜がある
- 表層細胞には多数の微絨毛があり、その上を糖衣が覆い涙液保持に関与する
- 表層細胞間は密着結合(tight junction)が存在しバリア機能を持つ
- 他の細胞間はデスモゾームで接着
- 基底細胞は基底膜とヘミデスモゾームで接着
- 基底膜は上皮細胞が産生する厚み約50nmの膜でⅣ型コラーゲンと糖蛋白から成る
- ターンオーバーは約1週間
- 角膜輪部の上皮は十数層から成り、幹細胞が存在する
- palisades of Vogt: POVが健常な上下の角膜輪部上皮に見られる
Bowman層
- 微細なコラーゲン線維からなる無細胞性の層
- 厚み約10µm
- 胎生期の一次実質から成る
- 障害されると再生せず、欠損したままとなる
角膜実質
- 角膜実質細胞、Ⅰ型(80%)コラーゲン(Ⅲ、Ⅴ、Ⅵ少量)、プロテオグリカンなどから成る
- 角膜厚の90%を占める(約450µm)
- プロテオグリカン=蛋白質+多数のグリコサミノグリカン鎖が結合したもの
- 角膜実質のグリコサミノグリカン=ケラタン硫酸(65%)、コンドロイチン硫酸(30%)
- 角膜実質細胞はこれらの合成、障害時に分解などを行う
- マクロファージなどの単球系細胞が存在する
Descemet膜
- 内皮細胞が分泌する基底膜
- 厚みは約10µm
- 人体で最も薄い基底膜の一つ(水晶体嚢も薄い)
- Ⅳ・Ⅷ型コラーゲン、ラミニンから成る
- PAS染色陽性
- 障害されると周囲の内皮細胞から分泌され再生する
- 加齢とともに肥厚する
角膜内皮
- 単層扁平な六角形である角膜内皮細胞の層
- 厚みは4-6µm
- 分裂能は乏しく障害されると周囲細胞が拡大して置換される
- 細胞間は密着結合(tight junction)で結合している
- 加齢とともに細胞数は減少する
- 角膜実質↔前房間の水分、栄養、電解質のやり取りを行う(バリア機能とポンプ機能)
- 障害されると角膜実質浮腫、上皮細胞間浮腫を起こす
- 500個/mm2以下で水疱性角膜症のリスク大
- 内皮細胞の栄養は房水から得られるため、毛様体機能低下では内皮が障害されやすい
角膜の神経
- 知覚神経は三叉神経第1枝(眼神経)
- Bowman層直下に上皮下神経叢、Bowman層を上皮側に貫通し基底細胞神経叢を形成する
- 無髄神経線維で角膜の透明性に関与する
- 角膜上皮創傷治癒に関与する
- 障害されると神経麻痺性角膜症をきたす
角膜の機能
- 外界とのバリア(前方の眼球壁を構成)
- 透明性の維持(光の透過)
- 光の屈折(集光:約42D)
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