新専門医制度で医師・医療の質は担保できるのか?制度と実情

結論からいいます。

新専門医制度で、専門医の質は担保できません。

当記事は眼科における内容、考察ですが、他の科の医者にも当てはまることがあるかもしれません。

※一個人の感想であることをあらかじめご了承ください。

目次

新専門医制度とは?

新専門医制度は、統一された更新認定基準で専門医の資格を認定・更新し、専門医の質の担保することを目的としています。(日本専門医機構ホームページから要約)

元々の日本の専門医は、眼科なら眼科学会が認定する眼科専門医、内科なら内科の学会、整形外科なら整形外科の学会がそれぞれ専門医の試験を行い、専門医の資格を認定していました。

それらを、「これからは日本専門医機構が専門医を管理します。」となったということです。

ただし実態は、専門医試験自体はいままで通り学会主体で行っていますし、そこで合格した人に対して、日本専門医機構が認定する、と形式が変わっただけです。

その他、専門医試験を受けるまでの研修病院の指定や、専門医更新のために必要な手続き、講習の受講、その他面倒な手間が増えたたけです。

統一された認定基準も何もない

それぞれの領域の診療科がそれぞれ専門医の認定を行っており、専門医における統一された基準がないことが問題と言っていますが、そもそも内科、外科、眼科、耳鼻科、麻酔科など、診療科ごとに診療する内容はかなり変わってきます。そこに統一させた基準を持たせること自体なかなか無理があるのでは、と思います。

診療科ごとに専門医試験の合格率が30%、片や90%と大きな差があるようなら、よくないのはわかります。同じ専門医でも希少性が変わってきますし、実力としても差がありそうと思えますね。とはいえ診療科が違ければ診療内容が大きく違ってくるので、合格率の数値でしか評価はできませんが。

要するに、「合格率を何%ぐらいにするように」と指定することぐらいしか、統一されたレベルというのは難しいのではないでしょうか。(そのような規定は今のところないようです)

眼科における新専門医認定の実態

過去3年間の眼科専門医試験の合格率は以下のようになっています。

  • 2021年 合格率66.9% 受験者数341人 不合格者数113人
  • 2022年 合格率90.6% 受験者数392人 不合格者数37人
  • 2023年 合格率94.5% 受験者数345人 不合格者数19人

2021年が新専門医制度前の最後の眼科専門医試験です。2022年が新専門医制度での第1回目の眼科専門医試験です。2023年は第2回目ですね。

受験者のレベルが毎年同レベルだとすると、合格率が上がったのは試験問題が簡単になったからです。

新専門医制度では、専門医を取るまでの期間が限定されており、ある一定期間を過ぎると試験を受ける資格がなくなります。合格率が低すぎると専門医の資格を取れないまま期限が過ぎ、生涯専門医を取れない医者がでてきてしまう可能性があります。そのことを危惧するかのような合格率の上昇、学会側の動きがよくわかる合格率です。

そして実際に、

「受験資格を失う受験者の数が非常に大きくなるリスクを危惧した」
「問題作成において吟味に吟味を重ねた結果、結果的に合格率が高くなった」

などと試験作成側も述べています。

では、簡単に合格ができるようになった試験で認定された専門医は、専門医の質としては大丈夫なのでしょうか?という懸念が生じます。

もちろん、質として十分な医者が大半ではあると思いますが、従来なら不合格となっていたであろう医者も簡単すぎる試験で合格している可能性がありますよね。

あれ?これじゃあ専門医の質を担保するための新専門医制度、担保できているの?という話です。

新専門医の資格更新について

新たに専門医を取る医者にとっては上述のように、眼科は簡単に受かる試験になっています。(いつまでこのような状況かはわかりませんが)では、元々専門医をもっていた人が資格を更新する場合はどうでしょうか。

旧専門医制度も、新専門医制度も、5年間に必要な単位数を取得することで専門医を更新できます。従来の更新と違い、新専門医制度では、医療安全や感染対策、医療倫理などの共通講習を受講する必要があること、どういった患者を診てどのように対応したかなどがわかる診療実績の証明書を提出する必要があります。

共通講習の内容は大切な内容であることはわかりますが、やっている内容は大学などのe-learningレベルのことです。真面目に聞いても聞かなくても問題なさそうですし、診療実績の証明なんてまともに働いている人からすると面倒な手続きでしかありません。50症例を提出するとのことですが、5年間に50症例を診ない医者なんてこの世に存在するのかレベルです。

要するに、手間をかけさせるだけで、質を保てるための内容とはほど遠い、というのが正直な感想です。もちろん、更新基準を難しくして専門医を失う人が続出するような事態になったら、各学会から猛烈な批判にあうことでしょう。各学会としてはどちらかと言えば専門医の資格を守ろうとすると思いますので。

結局、実態としては、「専門医は日本専門医機構が取りまとめます」という、お偉い人が現れたというだけという感じです。

まとめ

  • 現状、新専門医制度で専門医の質を担保することはできないと思う(個人的に)
  • 眼科専門医試験の合格率は新専門医制度になって過去最高レベルに高くなった(不合格者が少なくなった)
  • 専門医の更新は手間が増えるようになっただけで、誰でもできる
  • 簡単に受かる試験、資格更新に手間をかけさせるだけで専門医の質を保てるのか?

このような現状があり、「専門医の質を保つための新専門医制度」です。と言われても、はて???となってしまいます。

ただし日本専門医機構が専門医を管理しているような状況になり、専門医に関する各学会からの介入も限度があり、今後専門医を持っていないと不遇を受けることがあるかもしれません。

また、とっておくほうがよい専門医ですが、専門医をもっている医者のレベルが高いか?と言われると、今回書いてきたようにそれも正しくなく、まちまちです。

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